君の人生、変えてあげる。 537
僕たちはどちらからともなく、軽くキスした。
ここに来てからどのくらい時間が経ったろう?長かったような、短かったような。僕はズボンからスマホを取り出した。メッセージがあることを示す光が点滅していた。
綾ちゃんからだ
「たっくん、当選確実」
これが来たのが二分前だった。返信しようと思っているうちに、次のメッセージが来た。飛鳥ちゃんからだ。
「おめでとう!更衣室来れる?」
そうか、あそこで祝勝会なんだ。
当選して嬉しい、というよりは、ほっとした方が強い。これからもこの学校に居られるんだ、みんなと一緒だと思うと気分が楽になる。
「いい報告あったかしら?」
後ろから佐智子先生が言う。
「ええ。すみませんが、今日はこれで」
「いつでも待ってるね」
「はい」
僕は急いで身なりを整えた。
僕は足早に更衣室に向かった。
いつものようにきちんと男子側の入り口から入る。そして、いつものように女子側との境目の壁は、開いている。
「「たっくん、おめでとう!」」
もう、クラスの半分以上の人がいた。
壁に、即興で誰かが書いたのか「祝 当選!!」という文字の書かれた大きな紙が貼られていた。
少し、思考が停止した。
そして、改めて状況を確認した。
「副会長、たっくん、トップ当選」
綾ちゃんが単語をつなげただけの淡々とした口調で言う。
「本当に、良かった…」
飛鳥ちゃんが感極まっている。隣にいる香里ちゃんはもう泣いていた。
紙コップが配られ、ジュースかウーロン茶が注がれる。
「ケーキ、お待たせ!」
楓ちゃんが、台車にいくつかの箱を載せて入ってきた。
楓ちゃんはすぐに箱の一つを開けてケーキを切り分けていく。
誕生日に続いて、家がケーキ店の楓ちゃんがケーキを差し入れてくれた。