君の人生、変えてあげる。 533
「あ、ありがとうございます…さくらちゃんは元気ですか?」
佐智子先生はにこっと笑った。
「相変わらず元気すぎるくらい」
僕はふと思い出した。この会話は一週間前にしたのだった。
僕は何と言っていいのか分からなくなったが、佐智子先生は続けてくれた。
「選挙、手応えはどうだった?」
「そうですね…僕なりにはやり切りました」
「体育館の後ろの方で、たっくんの演説を聞いてたよ。よかったと思う」
「ありがとうございます。佐智子先生の話も思い出して、みんなで考えて、僕なりにまとめた結論です」
佐智子先生が頷き、微笑む。
少し髪型が変わったかもしれない。明るい茶色のセミロングで、以前より少し幼げに見える佐智子先生。とても子供のいる女性には思えない…可愛らしい。
それでいて、黒のトレーナーの上からでも豊かな胸がわかる。
「投票結果が出るまで学校にいる?それとも、もうお帰り、かな?」
「ええ、と…」
僕は、飛鳥ちゃんのさっきの一言"祝勝会やろう…みんなで"を思い出していた。それは多分、学校で結果を待つような感じがした。
「学校で、結果を待ちます」
佐智子先生は、またさっきとは別の表情でにこっと笑った。
「きっと、たっくんにはいいことがあると思う」
「そうだとしたら嬉しいですね」
佐智子先生は僕の耳元で小声で囁いた。
「……また、2人で会えない、かな」
「いいですよ」
「ありがと」
ちょっとだけ、制服のズボンの下が、のっそりと持ち上がった気がした。廊下には僕と佐智子先生以外には誰もいなかった。
佐智子先生は歩き出し、僕はついて行く。その間に飛鳥ちゃんとメッセージのやりとりをした。飛鳥ちゃんや何人かは教室で結果を待つけど、ほかの多くの人は部活とか、それぞれの場所に行っている。そして、結果が出たら、集まれる人は集まろう、たっくんも来られるよねというような話だった。
『うん、もちろん、そのとき行くよ』と答えてメッセージのやりとりを終えた。