君の人生、変えてあげる。 514
明日の臨時生徒総会は、選挙の立候補者にとっては最後の、最大の演説機会でもある。一ヶ月前の僕だったら全校生徒の前で演説なんてとても考えられなかったろう。でも、今は演説のことを思っても不思議と緊張しなかった。もう、いろいろなクラスでの演説は何回もした。僕はいつしか、原稿でなく自分の言葉で話せるようになっていた。
その日の夜はテスト勉強とともに臨時生徒総会で演説する原稿にも目を通し、頭の中に叩き込んだ…正直、ちょっと大変だった。
そうしているうちに眠気がやってきて、ベッドの中へ……ぐっすり眠れた気がした。
「おはよう、たっくん」
朝、登校し校門をくぐって最初に出会ったのは綾ちゃんだった。
「おはよう、綾ちゃん」
「たっくん、よく眠れた?」
「うん」
「今日の演説は大丈夫?」
「僕の中では、バッチリだよ」
地歴や公民のテストはそれほど問題なく終え、テスト期間は終わった。
臨時生徒総会は午後から、体育館で行われる。僕たちも食事して体育館に行くと、かなりたくさんの人が集まっていた。授業ではないので帰ってしまってもいいので、みな関心がかなり高いことがわかる。
左隣に飛鳥ちゃん、右隣にみさちゃん、と座る。ざわざわしているが、壇上に純会長が立ち、話し始めると一斉に静まり返った。
「皆さん、テスト後の解放された時間にわざわざこの臨時生徒総会に集まってくれてありがとうございます。私たち、生徒会本部は、涼星の閉塞感打破のため、学校側が進める共学化をよりよいものにするため、舵を取っていきたいと考えています。皆さん知ってのとおり、それをより確かに進めるため、生徒会本部の仲間を増やす補欠選挙を明日行います」
ここで純さん、一息ついた。
「今日の議題は、その共学化に関する学校側との交渉の大枠を、選挙後の新しい生徒会本部に、任せていただけるか、ということです」
議題は伝わっているので会場は静かなまま。
「では、議長団を選出します。議長、三年一組 竹中範子さん、副議長、二年五組 米田恵さん、書記、一年六組 明智充代さん、にお願いしています」
「米田恵さん、って、椎名先輩のショートリリーフ、って言ってた人?」
僕は飛鳥ちゃんに聞いた。
「そう」
飛鳥ちゃんは短く答えた。
国会とかで副議長は野党から出る慣例があると聞いたことあるけど、これもそうなんだな。けっこう本格的だな、と思った。
「この議長団でいい、という人は拍手お願いします」
満場の拍手が響いた。もちろん僕も拍手した。
「ありがとうございます。皆さんからの多くの支持を頂けたと判断いたしまして、議長団は竹中さん、米田さん、明智さんの3名を選出いたします」
純さんの言葉が静まりつつある館内に響く。
「では……続いて、補欠選挙に立候補する方々の立会演説会を行います」