君の人生、変えてあげる。 51
新婚…
もし、こんな風に飛鳥ちゃんと家庭を築いたら、どんな風になるんだろう…
想像しようとした。飛鳥ちゃんのことは好きなことと、今この状態が心地よいのは間違いない。でも、僕はまだ、飛鳥ちゃんをまだきちんと知らない。そして、想像できるだけの将来の姿が、まだ無い。
僕は、多分笑顔の後に、困った顔になっただろう。
「あ、ごめん、気にしないで」
「いや…別に、困ったわけじゃなくて」
飛鳥ちゃんは牛乳を飲んだ。飲み物は、秀雄さんの冷蔵庫から頂いた。冷蔵庫の飲み物は、未成年が飲めるものは飲んでいいと許可は取っているそうだ。
「困るのは、分かる…だって、クラスの他の子とかからもいろいろ言われたりしてない?」
「えっ…」
僕は、あの旧校舎での胡桃ちゃんを、思い出したりしてしまった。
「ゆっくり、考えてね。その後、もしよかったら、私を選んでくれたら、うれしい」
飛鳥ちゃんは、そう言って下を向いた。
その時、飛鳥ちゃんのスマホが振動した。
「あ、叔父さん、30分くらい後に着くって」
パンが焼けた。僕たちはマーガリンやジャムを塗って、パンを食べ始めた。
「あ、そうだ」
飛鳥ちゃんが何かを思い出したようだ。
「選挙の話だけど、来週、1年生の各クラスの委員長に会ってみない?」
「…いいけど、大丈夫?」
「1年にはそれほど反対派はいないから。実は、みんなに話はつけてあるの」
僕は、ちょっとほっとした。
「ええと、2組は、確か長沢 遥さんだったね」
「あ、美術で会ってるよね」
それから、飛鳥ちゃんは、3組から6組までの委員長を簡単に説明した。
「多分、何人かは、他の役職への立候補も引き受けてくれそうなんだよ」
「えっ、そうなの?」
「うん、話をしてたっくんに協力したいって言ってくれた子とか、もともと生徒会に興味があった子とか…理由はいろいろだけどね」
「ありがとう。助かるよ」
強力な味方がつくのはいいことだし、何より飛鳥ちゃんがクラス委員長でホントに良かったと思った。
「よく眠れたかい?」
食べ終わって、片付け終わった頃に秀雄さんが来た。
「はい、おかげさまで」
飛鳥ちゃんは、いろいろのお礼と、そして、言いにくそうに、シーツを少し汚してしまったので可能な限り手洗いした(僕がコンビニに行っている間にそれをやっていたようだ)が完全ではないこと、を話した。
秀雄さんは短く一言「気にするな」と言った。