君の人生、変えてあげる。 492
「そうか…」
僕はちょっと恥ずかしくなって下を向いた。
その時、
「海里、いるの?」
脱衣室の方から声が聞こえた。
「あ、お姉ちゃん、おかえりなさい。珍しいね、この時間に」
「次の仕事夜だからちょっとだけ帰ってきたんだ」
海里ちゃんは、突然の出来事に固まる僕に耳打ちした。
「お姉ちゃんになら、バレても、怒られないから、大丈夫」
お姉さん…つまり、峰代さん!?
あの人気グラビアアイドルがまさかすぐ後ろにいるなんて思いもしない。
「ねぇ海里ちゃん、お姉さんって」
「うん、たっくんもよく知ってるお姉ちゃん」
やっぱり…!!
「海里、ちょっとシャワー浴びたいんだけど……いいかな?」
「あー、ちょっと待って」
海里ちゃんの言葉は峰代さんに届かなかったようだ。数十秒後に、僕の後ろのガラス扉は、開いた。
「あれ、この人もしかして、海里がよく話してた、たっくん?」
僕は目を伏せた。あの、峰代さんが、シャワーを浴びると言って入ってきた、ということは、何も身に着けていないかもしれない…僕の心臓は最近久しくなかったくらいに急速に脈打った。
「そう。同じクラスで、涼星に初めて入ってきた男の子、酒本拓真くん」
「ふふ、そのたっくんと一緒に入ってるって、海里もやるわねぇ」
「えへへへ」
海里ちゃんは峰代さんに僕のことを話している様子。
好意的に思われているなら嬉しい。
「あの、お邪魔してます」
「うふふ、初めまして。一度会ってみたかったの」
僕はおそるおそる、顔を上げて、後ろを向いた。
そこには、グラビアで何度も何度も見ていた峰代さんが、ただタオル一枚で、下の方を半分くらい隠しているだけの小さいタオルで、つまりそれ以外は全く何も身にまとっていない状況で、立っていた。
「あ、あの…ごめんなさい」
僕はもう一度顔をもとに戻した。
「気にしないで。見られるのは慣れているんだ…あ、変な風に思わないで。水着速く着替えるときいちいち更衣室とか行ってられないからね」