君の人生、変えてあげる。 472
「酒本君、ちょっと時間ある?」
「はい、少しなら」
飛鳥ちゃんの“委員長会議の様子を教える”約束がちょっと気になるが、会議が終わるまでにはある程度時間がかかるだろう。
「酒本君に、会いたいって言っている子がいるの。ついてきてくれる?」
「はい」
突然のことに、僕は不安になりながらも先生についていった。まあ、仲良くなった佐智子さんだ、悪い話ではないと思う。
「さくらちゃん元気ですか?」
「うん、元気すぎて困っちゃうくらい」
そんな話をしながら、三年生の教室の一つに来た。
その人は、一人で座っていた。
ショートカットの、大人びた感じの人。
「彼女、柿沢友梨佳さん」
「はじめまして、私も、佐智子先生と同じ、シングルマザーなんだ」
「あぁ、そうなんですか、先輩が…」
以前、竹中先輩や勝代さんから聞いたシングルマザーの3年生の先輩の存在。
佐智子さんが彼女を紹介した理由が分かった気がした。
「酒本拓真です。お話は聞いてました」
「うん、私も。佐智子先生や、クラスの子からいろんな話を聞いてて」
“男なんて、って思っている”って言われている人だ。何を言われるのだろう?
「そうなんですか」
「うん、私も…正直言うと、涼星に男子が来る、って聞いて、あんまり良くは思わなかったんだ。個人的にかもしれないけどね。でも、酒本君って、すごいいい噂しか聞こえてこなくて。どんな人か会ってみたかったんだ」
正直3年生の先輩方にはどう見られているかわからないのが本音である。転入してから交流なんてなかったし、生徒会の方々、勝代さんがいる文芸部…2年生が主体の場所にしか関わりがなかったのだから…
「範ちゃんが酒本くんはいい子だからって」
「えっと…竹中先輩、ですか?」
僕は、あの少し変わったメイド喫茶で話した竹中先輩や、言っていた内容を改めて思い出していた。
「そう。酒本君のいろいろなうわさ話も」
柿沢先輩はそう言って改めて僕の全身を見た。
「あんまりプレイボーイ、っていう感じじゃないね。でも、結構たくさんの子とセックスしたんでしょ」
「えっ」
さすが、子供を生んでいる方となると言うこともオブラートにかぶせるようなところがない。