君の人生、変えてあげる。 459
「そこに関しては本当に、お願いします」
深々と頭を下げると、聡美さんは「そこまでする必要ないのよ」と笑った。
僕らが介入できないことには、聡美さんたち上の方の力を借りるしかないのが現状だと思う。聡美さんが毅然とした態度ですべてを取り仕切るのなら、非常に心強いことだ。
満足いく話が出来て、聡美さんの部屋を出る。
陽菜さんはずっと扉の前で待っていたようだ。
「陽菜さん、待っていてくださったのですか?」
「ええ、戻る道をご案内しないと、と思いまして…いえ、嘘です。もっと拓真さんとお話したかったんです」
「あ、なんか、ごめんなさい、ここに来る間にもう少し話せていれば」
「いえいえ、今から話せるじゃないですか」
陽菜さんはそう言うと可愛らしい笑顔を見せてくれる。
茉莉菜ちゃんのメイドとして仕事していたときにはなかった表情。
そこで改めて僕らとも年齢が近いことを思わせる。
「お嬢様には申し訳ありませんが」
「茉莉菜ちゃんには普段から助けてもらっていますから。それより今は陽菜さんともっとお話したくて」
僕は陽菜さんの後ろを歩いた。
その道は、多分ここに来た道とは違っていた。
「陽菜さんは、高校は涼星だったのですか?」
「いえ。普通の共学の公立高校でした。庶民ですから」
”うちだって庶民と思うのだけど“と僕は頭の中で思った。
「陽菜さんには、御兄弟は」
「いないです。一人っ子で…兄弟がいればもっと違った道もあったかもしれませんね」
それは…僕もなんとなく思うことだ。
「こちらへどうぞ」
まったく知らない部屋に案内された。
「ここは何ですか?」
「私が普段使っている部屋です」