君の人生、変えてあげる。 44
「なんの話をしていたのですか?」
「いや、ちょっと、男同士の話をね…ハハハ」
秀雄さんはそういってまた笑った。
飛鳥ちゃんも微笑んだ。
料理は、メインの肉料理。ナイフとフォークは慣れてはいないが、何とかなった。
そしてデザート、で、コースは終わった。
さすがは、飛鳥ちゃんが「うれしい」というだけの店。おいしかった。
そして、過度に緊張するでもなく、コース料理を楽しむことができた。
僕の人生に、また一つ、経験を付け加えることができた。
僕たちは店を出て、再び秀雄さんの車で少し移動し、秀雄さんが持っているというマンションに着いた。
来客用の駐車場に停めて、秀雄さんは階段で二階に上がり、部屋に案内してくれた。
キッチンもその部屋のなかにある、ワンルームというタイプだった。
男性の部屋、という割には、片付いた感じだった。
「じゃあ、僕は向こうに戻るから」
「…向こうって?」
「もう一つの自宅にだよ」
「えっ!?」
飛鳥ちゃんも予想外だったようだ。
「明日の朝また迎えに来るから。食事も済んだし、あとは風呂と寝るだけだから、2人でも大丈夫」
「…で、でも」
「ちゃんと言ってあるから」
そう言って、秀雄さんは行ってしまう。
…なんと、飛鳥ちゃんと2人きりで一晩過ごすことになってしまった。
「…もう、叔父さんったら」
飛鳥ちゃんは少し呆れた風に言う。
「…でもよかったかな、せっかく…」
その後は、小声で何を言ったかはよくわからなかった。
「ま、まあ、とりあえず、よろしく」
「うん」
「お風呂、どっちが先に入ろうか?」
「…たっくん、先に入って」
飛鳥ちゃんは、ちょっと考えてから、そう言った。
「ありがとう。そうさせてもらうよ」
「バスタオルは、これ使って」
僕は着替えと、飛鳥ちゃんから受け取ったバスタオルを持って、バスルームに入った。