君の人生、変えてあげる。 428
温かい雰囲気の中、僕たちは2年1組を後にし、2組に入った。
さっきとは打って変わって、まるで授業の前のように、みな話を聞いてくれる雰囲気になっていた。
…今までのクラスでは一番緊張する…
それでも、決まり文句的なものは言うことができた。
「それでは、お預かりしているご質問にお答えします。まず一つ目『女子ばかりの学校に来て居心地は』ですが、まずは僕の過去から簡単に話そうと思います。僕は転校前の男子校で暴力を受けて、しばらく引きこもっていました」
シーンとしていた教室がざわついた。
初めてクラスのみんなに話したときも同じような反応だったから、ある程度想像はできていた。
「ここの理事長と僕の母が友人で、編入を勧められて二学期から通い始めたのですが、女子校とは知らされていなくて最初は戸惑いました」
一息ついて僕は続ける。
「でも、皆さん本当にいい人ばかりで、親切にしてもらって、いろいろな経験もさせてもらって…」
ここは、性的な意味にも捉えられてしまうかもしれない、と後で思ったが、全体の中で捉えてもらえばなんということはないだろう。
「正直に言うと、人生が変わったくらいの素晴らしい日々です。今、こうして生徒会役員の候補となって皆さんの前にいることだって、昔の僕には考えられませんでした。だから、居心地は、というご質問の答えは、最高に、いいです…そして、それは僕だけではなく、二番目のご質問の答えに入りますが…」
僕は歩ちゃんの方を見た。
「はい、男の子がクラスに入ってどう思ったか、ですが、まず最初は、転入生が男の子…酒本くんだったとは知らなかったのでびっくりしました。ですが、彼は普通の男子とはちょっと違う…何かは表現しにくいんだけど、いろいろ話を聞いてるうちに人柄にも惹かれたし、仲良くなれてよかったって思います」
「私は中学までは共学の学校だったから男子と話すのは抵抗はなかったです。酒本くんは優しいしかっこいいし責任感も強いし、生徒会にはぴったりの人だと思います。そんな人とクラスメートになれたのは、すごく嬉しいです」
鈴ちゃんも歩ちゃんの後に続けて言う。
僕と同じクラスでよかった、というのはすごく嬉しいけど、ちょっと照れるような表現もあった。
最後にみさちゃんが、共学化はきっと学校に良い効果をもたらすと私達は信じている、なような内容を言って締めくくった。
一番前で聞いていた赤松先輩は、うなずくような動作をしてくれた。
教室に戻る途中、新聞委員の麻由ちゃんが掲示板に新聞を貼っているのを見かけた。
「涼星新聞 臨時日報版」
「『共学反対派』候補者出揃う」
「反対派内 早速亀裂露呈」
「あ、たっくん、おつかれ」
「学校新聞?」
「うん、私達、こういう選挙みたいに状況がどんどん変わるときはこういう臨時日報版出すんだ」