君の人生、変えてあげる。 403
「あ、ああ、ええと…」
もう動揺しまくって何も言葉が出てこない。一番危惧していた最悪の状況じゃないかこれは…
(たっくんリラックスして〜)
海里ちゃんが3組のみんなからは見えないところで背中を撫でる。
反対側からはみさちゃんが撫でてくれる。
みさちゃんが小声で言う。
「お風呂のこと思い出したなら、一人でお風呂に入っていることを想像して」
僕はその通りにした。あのときの露天風呂に一人で入っている…確かに、リラックスするシチュエーションだ。僕はだんだんリラックスしてきた。
「みさちゃん、ありがとう」
そうして、僕は言いたかったことをいうことができた。
海里ちゃんは、先の話に合わせたのか
「性別の壁も超えられる酒本君は、きっと新しい涼星をよい方向に導ける」
ようなことを言った。
拍手に送られ、僕たちは無事に三組を出る。
「本当は、一人でじゃなくお風呂に入っても、リラックスしてほしいけどね」
みさちゃんは小声でそう言った。
こうして初めての挨拶回りは無事に終えることができた。
みさちゃんと海里ちゃんのフォローもあって乗り切れたけど、今後は僕も動揺せずきちんとしないといけないな。
「ミサは先に戻ってて」
「うん」
みさちゃんと海里ちゃんがそんな会話をしていた。
「たっくん、さっきので想像しちゃったなら、またお手伝いしてあげるよ」
海里ちゃんが囁いた。
「えっ…」
驚く僕に海里ちゃんはさらに囁く。
「5時間目の理科総合は実験でしょ」
「うん」
「更衣室、行っちゃおう」
海里ちゃんは、そう言うとすぐに歩き出した。
実験室は、僕たちの更衣室がある棟の、一つ下の階にある。
「有佳と胡桃に頼んで、私たちの教科書とか持ってきてもらうようにしてるよ」
「いつの間に…」
「これも、たっくんの為なんだ」
海里ちゃんがニコッと笑って言う。
そうすると、時間に余裕が出てくる。
更衣室の扉を開け、海里ちゃんが鍵をかけた。
「ごめんねたっくん…私の方がムラムラして襲うみたいになっちゃって…」