君の人生、変えてあげる。 41
「そうなの?」
それは、ちょっと意外だった。
「私は、初等科から星ヶ丘女子だったの。男子なんて…ごめんね…異世界の存在のように思っていた」
僕は今まで母さんの子供時代なんてほとんど考えたことがなかった。考えてみれば、母さんがはじめから母さんだったわけではない。
「大学も女子大にして、でも、社会に出てからは女性だけ、ってことはあり得ない…怖かった。それでも、時間をかけて、男性も怖い存在というばかりではない、って私を安心させてくれた人がいた。それが、拓真のお父さん」
「父さんが…」
厳しかった父親にそんな過去があったとは。
「反対派も、私みたいな男子を知らない、以外にも男子がいないから女子高に入った、とかいろんな人がいるかもしれない…これは本当は聡美とかの仕事だと思う。私からも聡美に言う。でも、上からいうだけではなかなか納得しない。拓真も、時間をかけて『僕は、あなた方に危害を加える人じゃないんだ。一緒に学校生活を楽しくしていける人なんだ』って説得していけば、きっとほとんどの反対派は分かってくれると思う。拓真なら、それはできると思う。拓真のクラスメイトは、拓真を受け入れてくれたのでしょ」
「うん…」
「だったら、その反対する人たちを説得して、みんな仲の良い学校にするのが拓真の役目だと思うな」
…そう。母さんの言うとおりだ。
先は険しくても、みさちゃんや秋ちゃん、クラスのみんなは僕を受け入れ、味方してくれた。
そのみんなのための、「恩返し」の生徒会選挙立候補だと、今感じた。
夕方。
僕はシャワーを浴び、多少小奇麗目の服装をして、泊まりだから着替えと、一応歯ブラシとかを持った。
そして、菜々子先生にもらった、あの小箱を、一応かばんに放り込んでおいた。
そして家を出る。
「失礼の無いようにね」と母さんは見送った。
一応歩いて行けるコンビニが待ち合わせ場所だった。
五分前くらいに着いたが、飛鳥ちゃんはもう来ていた。
私服の飛鳥ちゃん…なんか、大人っぽい…
「ごめん、まった?」
「ううん、今来たところ…あ、叔父さん来た」
青い車がコンビニの駐車場に入ってきた。
僕はあまり車に詳しくないが、わりとありふれた、小さめの、車だった。
「はじめまして。君が、酒本拓真君?」
「はい、はじめまして。飛鳥ち…いや、飛鳥さんの、叔父様ですか?」
「僕は、原田秀雄。よろしく」
遊び人、と聞いていたのでイケメンなのかとおもったが、ごく普通で、背もどちらかというと低めの感じだった。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「拓真くんは、飛鳥ちゃんと同じ高校なんだよね?女の子の中に男一人ってのも大変だろう」
「まあ…でもみんなよくしてくれますから」
立ち話もほどほどに、秀雄さんの住むマンションに向かう。
「天空タワー」には、そのマンションからのほうが近いと秀男さんは言う。