君の人生、変えてあげる。 39
「実は…選挙の話もいろいろあるんだけど…私の叔父にたっくんの話をしたら、是非夕食でも、って言って」
ええっ!飛鳥ちゃんの、家族に会うの?!
僕はほぼそのような言葉を飛鳥ちゃんに返してみた。
「そういう深いことではなくて。遊び人の叔父…実は天空タワーの優先権もその叔父が譲ってくれたんだ」
飛鳥ちゃんはちょっと苦笑いして。
「いろんな話知ってるから、たっくんもきっと面白いと思う」
そして、飛鳥ちゃんは、さらに声をひそめて言った。
「優先入場だけど、朝行った方がいいの…で、叔父の持ってる都内のマンションに、泊まっていかない?」
…いきなりの提案。
昨日母さんに言われたことを、まさかもう実践するときが来るのか…?
…とはいえ、飛鳥ちゃんの好意を無駄にするわけにもいかない。
「そうだね。その方がいいなら、よろしく」
「ありがとう。向かうのは夕方でいいから、ここで待ち合わせしよう」
飛鳥ちゃんはそう言って、コピーした地図を見せた。
家に帰って母と昼食。
いきなりで、言い出しにくいが…
「母さん…今日、ゆ、夕食、いらないから」
母は、食べる手をとめて、微笑んだ。
「まあ…クラスのお友だちと、食事?」
僕は、クラスメートの叔父さんが、という話をして、そして、叔父さんのマンション(敢えて、叔父さんが持っている、という言い方はしなかった)に泊まっていく話をした。
「あら、そう。早速ね」
母さんはニコニコしながら僕を見る。
「そうやってクラスのみんなとうまくやっていくのが大事なのよ。これからも、そういうときは気にせず言ってね」
昼食の後、片付けをする母さんに、学校の生徒会について聞いてみると、意外な答えが返ってきた。
「私、これでも役員やってたのよ?会長が聡美で、私は副会長だったの」
「母さん、本部役員だったんだ。ちょっと意外」
「30年くらい前の話だしね」
それから、母さんはそのときの話を続けた。
「あの頃のファッションは、たとえば不良が長いスカートをはく、ようなことがあって…」
母さんは、水道を止めて、手を拭いて、押し入れからわざわざ当時のマンガを取りだしてきてくれた。
「こんな感じ…まあ、これは極端だけど」
地面につきそうなスカート丈。そんなものは、想像していなかった。
「星ヶ丘女子は、そこまでの人はいなかったけど、スカート丈の検査はあったりした。そこで私たちは『ある基準で線を引いて良い悪いを分ける意味はあるのですか』と主張した。それが通って、その時は『スカート丈は見苦しくないこと』に、校則が変わったの」
「母さん、結構行動的だったんだ…」
「まあ、聡美について行った感じだけどね」
僕は、生徒手帳の服装のところを思い出した。
「今は、スカートの長さ自体、何も書いてないけど」
「あのあと、ミニの流行があって、結局何が『見苦しい』のか、よくわからなくなって、結局その時の生徒会本部の人が交渉してそこは削除させた、っていう話」