君の人生、変えてあげる。 375
「えっ……大丈夫なんですか?」
「生活に必要なものは揃ってるよ。私、たまに1人で一晩過ごすときもあるし」
「どういったときにです?」
「文芸部の作品を作るのにここに籠ったりね。次の日学校でも大丈夫だよ」
「じゃあ、よろしくお願いします」
こうして僕は一晩、勝代さんと一緒にいられることになった。
それから結構長い時間、湯舟の中で二人で触り合ったりキスしたりしていた。風呂から上がったのは勝代さんが「そろそろお腹すかない?」と言ったときだった。
そのときにはもう外は夕焼けは薄れ、夜のとばりが迫っていた。
冷蔵庫は何も入っていないが、食材は勝代さんが用意してくれていた。
「たいしたものは作れないけどね」
おそらくインスタントのものだろうが、それでもいい匂いがする。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「お母さんには連絡した?」
「はい」
勝代さんが食事を作ってくれている間に、母には連絡を済ませた。
「勝代さんは?」
「私は大丈夫。小さいころから自由に何でもやらせてくれたから」
「信用されていたんですね」
「うーん、どうかな、どちらかというと放任気味だった、っていう方かもしれない。ちょっと寂しくはあったかな」
「そうなんですか」
「でも自由なのはよかったと思ってる…どうぞ」
勝代さんは、ひき肉のカレーとサラダを運んできた。
「ありがとうございます。おいしそうです」
「『山ごはん』…山でも簡単に作れるレシピ…で作ったキーマカレーなんだ。口に合うといいけど…」
「山登りとかされるんですか?」
「父と、兄がいるんだけど…2人が好きで昔は一緒に行ったことがある。部活入ってまでするのは考えなかったかな。文芸部の方が興味あったし」
柚希ちゃんとは案外話が合うんじゃないかとも思ったりした。
目の前のキーマカレーを一口いただく。
うん…辛さもちょうどいいくらいで、美味しい。