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君の人生、変えてあげる。
官能リレー小説 - 学園物

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君の人生、変えてあげる。 363

 「歩きますか?」
 そんなに歩きやすい靴ではない。
 「そんなには歩かない」
 勝代さんは僕をバスへと案内した。路線図をちらっと見ると登山口に行くバス。休日の朝にはきっと登山者がいっぱい乗っているのだろう。でも今は数人だ。
 僕たちは顔を見られないようややうつむいてバスの一番うしろに座った。
 乗っている間、勝代さんは何も言わなかった。その空気の中、僕も黙っていた。
 山がより近づく。

 勝代さんが降車ボタンを押したバス停は、僕たちだけが降りた。
 勝代さんは迷わず歩き出す。慌ててついていく。
 どのくらい歩くか分からなかったから長く感じたが、時計を見ると数分で、勝代さんは立ち止まり、鍵を取り出した。
 「ここ、親戚が、空き家をかなり安く手に入れて、山歩きとかの基地にたまに使っているらしい。今は使ってないから、鍵を借りてきた」
空き家とはいうものの周囲はそれなりに手入れがされていて、雑草が生い茂っていたりはしていなかった。

「まあ、入って」
「あ、ああ…お邪魔します」

勝代さんについて行くまま奥へ。
日差しのせいか電気をつけていないのに明るかった。

畳の上、テーブルの置いてあるところに座ると勝代さんも向かい合うように座った。

 「コーヒーとお茶はどっちがいい?」
 勝代さんはバッグから缶コーヒーとペットボトルのお茶を出した。
 「じゃあ、コーヒーで」
 僕は缶コーヒーを、勝代さんはペットボトルのお茶を飲み始めた。
 「ここ電気は来てるけど普段は切ってるから、冷蔵庫すぐには冷えないんだ」
 「そうなんですか」
 「ガスはプロパンガスがあって、お湯は沸くよ」
 「それはいいですね」

 そうは言ったものの、今お湯の用途はすぐにはなさそうだった。

 しばらく沈黙が流れた。
 虫の声が聞こえるくらい静かだ。

 「そう…作戦会議っていう名目で、と言ったから、まずは本題なのだけど、あの子愛って子が近づいたことは、反対派としてはやはり完全に逆効果になっているようだ」
 「やはりそうですよね」
 「あの謝レンも、いあの署名運動やってるグループとは一緒にされたくない、って方にいよいよ傾いている、と伝わってきている」
名前でしか聞いたことのないその人…それでもなんだか気の毒に思えてしまうのは気のせいだろうか。

「反対派の人たちが軟化しているということは」
「それもあるかもしれない。今までそのグループを引っ張ってきた人たちにとっては招かれざる客だったんだろうね」
「はあ…」
「一応子愛…彼女に賛同する人もいる。でもそれはごくわずか」

勝代さんは静かに話し、お茶をすする。
1学年しか違わないのにずいぶん年上の人のような気がした。

 「これまでは、少しずつ切り崩すようなことをやってきたのだけど、こうなったら、謝レンに直接働きかけてみようと思う」
 「直接というのは?」 
 「謝レンに『女子クラスを作るようにするからこっちにのらないか』と言う。バラバラになりつつあるグループだが、うまくいけば、ある程度意味のある人数が動くと思う」
 「本当ですか」
 確かに、もしも、こっちか、子愛さんかの二者択一なら、そういうこともありかもしれない。
 「うん…それで、そのときにはたっくんの助けも必要になる」
 「具体的には?」
 「多分、謝レンも何か条件を出してくると思う。それを飲めるかどうかは候補者でないと判断できない」

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