君の人生、変えてあげる。 362
心配されていたようなことは全くなかった。
前の高校はここからはるかに離れた場所だし、中学時代そんなに友達も多くなく交流もなかったので気づかれることもない(もっとも僕だってそのころの同級生の名前も顔も詳しく覚えてない)
駅に着く。
勝代さんとの待ち合わせ場所はこの駅の近くのカフェ、だったはず。
その喫茶店に入ってしばらくコーヒーを飲む。
スマホが振動した。
勝代さんからだ。
「下りの急行電車に乗って」
何だろう?さらに撹乱する必要とかあるのか?
一人で、この服装で電車に乗ることになる。でもここまで何もなかったことをある程度勇気にすることができた。
まだあまり行きたくなかったが、トイレに行っておいた。駅では女子トイレではもちろん男子トイレでも問題ありそうと思ったから。
電車の中でもう一度メッセージを受け取り、そこから多少戻るような形で、今まで一度も降りたことがない、山に近い、小さな駅で降りた。
降りた客は僕だけ、ホームには誰もいない。
急行…のはずだったけどいつの間にか普通列車になっていた。
少しウトウトしてしまったが、その間だろうか。
当然駅も無人駅だけど、自動改札機はあるのでICカードで精算できた。
駅の外に出る。
「たっくん」
そう呼ぶ声の方を向くと、黒髪の綺麗な美人がいた。
その主はもちろん…勝代さん…だが、普段とは印象が全く違って見えた。
「勝代さん…あの」
「全然違って見える?」
「はい」
「変装、ってほどじゃないけど、ちょっと制服のときとイメージ変えてみたよ…君の変装完璧だな。こう言ったら怒るかも知れないが、かわいいよ、といってもいいくらい」
怒るだなんてとんでもない。
勝代さんからそう言われてますます恥ずかしい…視線さえ合わせるのもやっとだ。
しかも今の勝代さんは…すごく魅力的で、その、いけない欲望まで抱いてしまいそうで…自分でもそれを抑えるので必死だ。
「行こうか」
「どこに、ですか?」
「二人で、話し合える場所。今からのことは、キミと、私だけの秘密」