君の人生、変えてあげる。 361
歩ちゃんのその表情に背中が寒くなったような、急にお腹が痛くなったような…
「大丈夫大丈夫、うちの学校の人でもたっくんだとは思わないはずだよ」
「この帽子を深く被れば顔も隠れる」
「私たちで囲んで歩けば周りからはわからないし」
どこか楽しげな皆に、ついていけない自分がいて…不安が増えてしまう。
「長めのスカートがいいね、スースーしないから」
ここで反論したところでいい展望が開けそうにはなかった。
僕は仕方なく、長めのスカートの中でも一番地味で目立たなさそうと思われるものを選んだ。
そして、みんなでまわりを囲んで化粧が始まる。僕はその過程を見るのが恐い気がして目を閉じた。
「さあ、たっくん、すっかり女の子だよ。目を開けて」
恐る恐る、ゆっくりと目を開ける……
鏡の前。
そこに立つのは自分ではない何か……のように見えた。
色白で、線のちょっと細い、少女。
…少女?
「うん、自分でやっててもビックリだね」
いつの間にやってきたのか、ひーちゃんが呟く。
正直、自分でもここまで変わるのかと驚いた。
「これが…僕?
「たっくんってもともと白くてかわいいから…」
「でもたっくんの顔だよね」
「絶対見られたくない…恥ずかしすぎる…」
かわいいって言われても複雑な気分だ。
中学時代の同期生達や前の高校の連中にでも見られたらと思うと、とても怖い。
とはいうものの出かけなくてはならない。
僕はさっき勧められた帽子を深くかぶった。
確かに、見られる懸念は少しは減った。
思い切って、これで出かけることにした。
駅まで歩く道は、さっきの言葉通りみんなでまわりを囲んでくれる。