君の人生、変えてあげる。 360
「状況は聞いたよ」
「目立たないように、だから、ひーちゃんのコスプレのようなものはイメージしないで。本当にごく普通の女の子に見えるように手伝うよ」
「そんなことできるの?」
女装なんかしたら余計に目立ってしまうのではないか、とかちょっと心配していたのだけど、その心配もちょっと薄れた。
「学校終わってから、私の家にちょっと寄れる?」
割と背格好が近い歩ちゃんが服を貸してくれることになった。
それでも、二人ともちょっとニヤニヤしているのが不安でもある。
…ということもあって、今日は朝から何だかソワソワして授業に集中できない、そんな感じがした。
幸い飛鳥ちゃんなどから心配されるほどのことはなかったけど。
「それじゃあ行こうか」
他の子が帰宅、部活に向かうのを確認して僕は歩ちゃんについて行く。
鈴ちゃん、ひーちゃん、伊織ちゃんの文芸部メンバーと揃っての移動である。
歩ちゃんの家は学校からそんなに遠くなかった。
家には誰も居らず、歩ちゃんが鍵を開けて僕たちは家にお邪魔した。
「ちょっと準備するから」と歩ちゃんが奥に下がったあと、鈴ちゃんが「参考資料」と言ってスマホで動画を見せてくれた。
何人かの女子高生が寛いでいる教室に女教師が入ってくる。
突然“この中に、男子がいるよ“という文字が出てくる。
映像が逆回転し、変装が解かれていく。
教室の中の女子高生は、全員男子になった。
そして女教師もかつらを脱ぎ捨てると…
“答:全員”
「すごい、最初女子にしか見えなかった」
まったく違和感がなかった…世の中、そういう人もいるもんだ、と感心してしまった。
「たっくんは中性的だし、メイクは薄くても大丈夫だと思う」
「背格好もね」
「ウィッグもつけてみようか、いいのがあるんだ」
鈴ちゃんと伊織ちゃんがいろいろ小物を取り出していると、歩ちゃんもこちらにやってくる。
「私服だけど、たっくんの好きなのを選んでいいよ」
まずは、ワンピースは除外しよう。着るのが難しそうだ。
そう思った後、僕は他の候補を眺めた。
下はスカートばかりだ。
「あの、ズボン、ってないの?ズボン、って言わないかも知れないけど…」
「うん、私たちはパンツって言ってるけど、ズボンでも大丈夫だよ…でも」
歩ちゃんはニヤリと笑った。
「せっかくだからスカートにチャレンジしてみよう」