君の人生、変えてあげる。 356
僕は、祐紀さんが最後の方に言ったことをもう一度頭に描いた。
女子高の方がいい、と言っている人を「女子クラスも作る」と言って少しずつ切り崩しているのは黒田先輩の工作。
「伝統ガー」と言っている人達が少数いるが、多くは「何でも反対」の人と重なる。子愛さんと手を結ぶとすれば、そこくらいだろう。ということ。
授業が終わり、今日は特に何もないので家に帰ろう、と下駄箱の前あたりまで来た。
そこで、また黒田先輩に出会った。
「今日はもう帰り?」
「はい」
「また文芸部にも遊びにきてね」
「はい、ぜひ」
「それと…私のことも名前で呼んでほしいかな……たっくん」
「ええと」
そう、慥かに黒田先輩は、黒田先輩、というイメージで、名前で呼ぶとか考えたことがなかった。
「私のこと、裏でいろいろ策を弄する先輩、というようなイメージで見てるかな?」
「ええと、あの、その節は、お世話になって、本当にありがとうございます」
なんだか、いろんな意味でお世話になっていて申し訳ないという気持ち、こんな僕にも力になってくれて感謝している気持ち…思わず深く頭を下げた。
「そんな畏まったお礼はいらないよ」
「ですが…」
「困った人には手を差し伸べたくなる、それだけのこと」
なら、なおさらのこと…
「ごめん、それとね、美和子からいろいろと聞いたよ、この前の週末…」
何のことを言っているかはすぐ分かった。
「ええ」
「文芸部の何人かと取材的に出かけて、そのあと…何て言うか、みんなと結構仲良くなったんだってね」
「ええ、はあ…そう、なんです」
「私はジャンルが違うから、一緒に行かなかったのは普通なんだけど…」