君の人生、変えてあげる。 355
「半分当たり。お父さんが台湾の人でお母さんが日本人で、日本で生まれたんだって…日本も台湾も『父または母がうちの国の人ならうちの国民』っていうルールだから、日本と台湾の両方の国籍を持っているらしい」
「ワタシもスウェーデンとデンマークの両方の国籍もってるヨ」
「そうなんだ…うん、二重国籍は、今や珍しくないと思うよ。特に未成年は。例えば台湾の国籍を離脱して日本単独の国籍になるには、台湾のルールだと20歳以上になって自ら申告しなきゃってことになっている。だからレンさんもそこは気にしなくていいと、個人的には思う」
「そうですよね」
「うん」
祐紀さんは食事を少し進めて、お茶を一口飲んだ。
「まだ酒本君が来る前、漠然と共学化の話が出ていた頃、そういう争点で選挙だったら、レンさん本人が反対派代表で出て当選だったと思う。前回の通常選挙でそうしなかったのは、まだそこまで共学化が争点ではなかったから」
「なるほど」
「酒本君が来て、共学化の話が急速に具体的になっていく中で、まず『うらやましい組』が離脱した」
「『うらやましい組』?」
僕は、竹中先輩から聞いた「3年生には『男子がいるクラスがたのしそう』っていう人が多い」という話を思い出した。
「共学の流れに大体賛成の人たち。酒本くんの存在を知って羨ましい、うちにも男の子欲しい、って考える人だね」
「はあ…」
「たっくんは人気者だね〜」
マギーさんがニコニコしてる。
「私たちの中にもそういうのはいくらでもいるよ」
黒田先輩が言う。
「たっくん、文芸部にも1組にも来てくれた。それで、具体的に男子のいる空間を考え始めた人は多い…そして、これは学園側が意図的に流した噂だと思うけど、共学化したら今の二年生のクラスにも男子を編入させる、という噂が流れて、特に1組では“共学化したらどんな男の子がくるだろう??”っていう感じの空気が大きくなっていった。たっくん、これから各クラスに回ると思うけど、ちゃんと根回ししてびっくりさせないようにいけば、いい雰囲気は、ある程度のクラスには、広がっていくと思う」
なるほど…
これからいい印象を与えられるかは僕次第ということだろうか…
「2年3年の場合はクラスごとに意見がまとまってるわけではないからね、1年6組みたいに」
昼休みが終わりに近づき先輩方とは別れる。
中身の濃い時間だった。