君の人生、変えてあげる。 351
「うん、聞いたんだ。やっぱりそっちでも話題になってたんだ」
「そう。昨日のあの昼休みの話から急に思ったようなりね。キョウガクに反対の人と手をくんで、とか考えんとせん、しかれどもうまくいくとは思はず」
「やはりそう思う?」
マギーさんは真面目な顔で頷く。
この人、こんな顔もできるんだなと感心しながら話を聞く。
「例えば反対という考えは同じでも100%意見が同じとは限らない。ましてネアはちょっと性格がアレだ」
…一緒にいながらそこまで言いますか。
「止めた…んですよね?」
「うむ。しかし私らの制止をはいそうですかと簡単に聞くようなやつではない」
「じゃあ、どうするとか…」
「見守るだけだね。きっとこの勝負はネアの失敗に終わる。ただ勢いだけで突っ込んで壁にぶち当たったときネアがどう考えるか、そこであいつに変化があったらアドバイスを送るのだ」
「ネアさんにはそれがいいと思う。意固地になりやすいタイプみたいだし、むやみに止めるより一度やれるだけやらせて頭が冷えてからものを説いてもいいと思う」
父さんもだったけど、僕の父方親族には意志の強そうな人が多かったように思う。
僕もそう言うところが似ていたら、この学校に来る必要も無かったかもしれない。
でも今となっては素敵な娘が多くいるここに来れてよかったと本気で思う。
「たっくん、食堂でのやり取りでは男子だからと言うだけじゃなくて酒本家の何か対立が絡んでいたようだったけど…」
「酒本家の面汚しって言われた。でも…」
正直、彼女が僕個人を敵視する理由が今ひとつわからない。
エリートコースから外れたと言うのも人によっては十分な理由なのかもしれないけれど、彼女の場合はそれだけでは無いだろう。
そんなことを考えながら、またネアさんと顔を合わせたらどうなるだろう?とややこわごわ食堂に入り、食事を受け取って席に着いた。
見渡したところではネアさんの姿は見えない。そういえばこれまで何度も食堂に来たけど会ったのは初めてだったから普段この時間にはここにいない人なのかもしれない。
「ああ、いつもこの辺、って聞いてたけどやっぱりそうだった」
「あ、黒田先輩、こんにちは」
黒田先輩は、二人の二年生…学年章で分かる…と一緒に来た。
一人はショートカットの、もう一人は結構長身の。
「たっくんに紹介するよ。生徒会役員選挙に立候補する小山内 祐紀さん」
「よろしく」
祐紀さんはやや低めの、落ち着いた声でそう言った。
「あと、こっちが、さかも…」
祐紀さんがもう一人を紹介しようとしている途中に、その長身の方はしゃべり始めた。
「君が拓真君?この度は妹が迷惑掛けててごめんね」
「ん?妹??」
飛鳥ちゃんや海里ちゃんあたりが?マークを浮かべているように首を傾げている。
マギーさんは彼女の方を見た後、「おぉ!」と何かに納得したようだ。
僕も一緒だ。
「酒本柚乃(ゆの)。よろしくね」
「あ…はい」
同じ苗字、つまり、あのネアさんのお姉さんだ。
確かに似ている。お姉さんは優しそうな人だ。