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君の人生、変えてあげる。
官能リレー小説 - 学園物

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君の人生、変えてあげる。 36

「本部役員に立候補するの?…なら、まずはこれを書く」
 綾ちゃんは特に表情を変えずに机の中から書類を取りだした。
 僕がそれを読み始めると、綾ちゃんは生徒手帳を取り出した。
「私もコンピューターではないので、生徒会本部役員選挙の規約を一字一句覚えているわけではない」

 僕は綾ちゃんの手元に注目した。
「推薦人…立候補するときは推薦人1名以上…人数に制限は無かった。
もし、1人に限るのが難しい、という意味で言ってるなら」
 僕はちょっとほっとした。
「ただし、立会演説会の応援演説に出られる推薦人は1名」

 それだと、やっぱり難しい…

「しかし、たっくんが、クラス回りを選ぶなら、6クラス×3学年で、18人で分担して各クラスで応援演説をすることは、不可能ではない」

 大勢の前で話すのは苦手なので、立会演説会よりは、確かにクラス回りの方がいくらか気楽かもしれない。
 そして、これで1人だけに頼むことは回避できそうだ。

「たっくん、生徒会に立候補するんだ!」
「すごいなぁ、頑張ってね!」
「たっくんなら絶対当選するよねっ!」
順に、歩ちゃん・律ちゃん・栞ちゃん。
他にも僕が書類を持っているのを見てやんやの大喝采になってしまった。

「たっくんを当選させるために応援団を作ろっか」
とは胡桃ちゃん。
「他のクラスや先輩たちにも宣伝しないとね」
とは沙羅ちゃん。

「私、委員長として、クラスを代表してセンタイ本部長になる」

 飛鳥ちゃんがやや大きめの声でそう言った。
 今度は音でなく理解しよう。戦隊、でなく、選対…選挙対策本部長 だな。
「じゃあ、胡桃ちゃん、応援団長で、沙羅ちゃん、広報部長で…」

 飛鳥ちゃんが次々と仕切っていく。そして、チャイムが鳴る時間が迫ったのを見て、こう言った。
「今日の四時間目の総合は、ホームルームにして、宿泊研修の準備の続きの予定だったけど、半分はたっくんの選挙に向けた役割分担の詳細とかを決める時間にしよう」


 ショートホームルームを経て、土曜、一時間目の英語会話。
 奈緒ちゃんが、となりに来てくれた。
「慣れるまでは、必要なところは訳すよ」
 
リサ先生、という金髪のアメリカ人の先生の言う内容(もちろん英語だ)を、奈緒ちゃんはスラスラと和訳して僕に教えてくれる。
…やっぱり帰国子女って違うのかな。
それでも、頼りになるのは間違いないので、奈緒ちゃんに全面的に頼ってみた。
そうすると、この授業に対する余裕も生まれたり。
リサ先生、たまに出る日本語がちょっと可愛らしいな…

「タク!」
 僕の英語力がもう少しつくまでは、先生が言ったことは表現できない。

「たっくん、自己紹介して、って」

 奈緒ちゃんに言われ、僕は立ち上がるが…
「ア、アイ キャン ノット スピーク イングリッシュ…」
 今の僕には、こうしか言えなかった。

 リサ先生は、笑顔で、短い文を言った。

「ユー ジャスト ディド」
 奈緒ちゃんは、ノートに“You just did.”と書いた。
「つまり“今英語話したじゃない”って先生は言ったよ」

 そうか、確かに、僕は英語を話せません、って英語で言ったな。
 それが通じたんだ。
 僕は、外国人に初めて自分の英語が通じて、うれしかった。 

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