君の人生、変えてあげる。 349
「ねえ、昨日の時点ではお姉さん、ネアさんと接点無かったんだよね」
飛鳥ちゃんが秋ちゃんに話しかける。
「うん、そう聞いた。だから、この話も、名前が出ただけで、姉もよく分かってないみたいだった」
「ということは、その間に少なくとも誰か一人いる。その人は、どう思ったんだろう?それによって、ネアさんがどんな風に出てくるのか分かれるような気がする」
「“反対派のホープ”か“単なるやっかいな人”か、っていう感じ?」
「反対派の人たちも考えが一緒だからって、じゃあ乗っかりましょう、ってわけには行かないでしょ」
「見た感じ、何しでかすかわからない人だもんね」
胡桃ちゃんと海里ちゃんも話に割って入ってきた。
「それまで進んでた話を、一気にひっくり返しちゃうこととか平気でやりそうだね」
「ネアさんて、あの人に似てそうだ」
「誰?」
「ほら、新しいアメリカの大統領」
僕はふっとそう言った後、改めて考えて、身震いした。
例えば、ネアさんが副会長になったとしよう。
何らかの方法で、会長の職務を停止する…隣国の例を参考に、例えば妹に生徒会の秘密を漏らした、という噂を流すとか…空気を読む会長だから、空気に逆らって権限持ち続けるのは難しいかも知れない…
そして「会長代行令」のようなものをどんどん出していく…アメリカでは、裁判所が差し止めたかも知れない、でも、ここって、裁判所に当たるようなものは、あるのだろうか…
それこそ大規模な抗議運動とか起こったらどうするのか。
景さんが役員になったときは波風立たなかったのに、たった1,2年のことで学校の中身が大きく変わったら…
男女の間に大きな「壁」ができたら?
いや、そもそも共学の話も白紙撤回されるかも?
…生徒会にどこまで権限があるのか、僕は頭の中でいろいろ考え、それが解決することは…なかった。
授業は普通に過ぎ、昼休みを迎える。
いつものように食堂に行こうと席を立った瞬間、廊下からこちらを覗き込む影が見えた。
「あれ……」
遠くからでもよくわかる顔立ち。6組のマギーさんと、3組のルイちゃん…意外な組み合わせだ。
「教室の中でイケナイことをしているわけではならざるなりネ」
「当たり前でしょう」
いつもと同じように飛鳥ちゃんたちと食堂に向かって教室を出た僕たちにマギーさんがそう話しかけ、飛鳥ちゃんが応えた。
まあ「常識的な範囲で」やっていることは、あるのだけど、この短い間には幸いそのような場面はなかった。
これからは改めて、もう少し気を付けた方がいいかもしれない、ツッコまれたらいろいろ面倒だ。
ルイちゃんの表情は僕の位置からは今は見えない。そういえば、マギーさんは、僕とルイちゃんが関係したことがあることは知っているのだろうか?