君の人生、変えてあげる。 348
「ありがとうございました。いい時間が過ごせました」
「私も。久しぶりに誰かと長い時間話せた気がする」
景さんが笑った。
彼女の心からの笑顔、初めて見た気がする。
「また、暇があったら遊びに来て」
「はい」
景さんと、猫たちに別れを告げ、僕は学生寮を後にした。
あまりにリラックスしたいい時間だったので、相談しようと思っていたことを忘れていた。
僕はそれを思い出して、家に帰ってから夕食前に景さんに“共学化のメリット”について考えている、とメッセージを打った。
「まとめるからちょっと待ってて」
というメッセージがすぐ来て、夕食後にもう少し長いメッセージが届いた。
「一般的なメリットだと、女子校がいいと思ってここを選んだ人に響かない。『考え直せる機会なんだ』って出していくといいと思う…」
景さんの返信からは
『考え方を変えるチャンス』
『これからの学校の在り方を一緒に考えよう』
『たっくんは決して特別扱い、というポジションではない』
という言葉が並ぶ。
確かに、と頷きながら僕のことまで分析する景さんがすごいと思ってしまう。
最後に
『一度私もたっくんのクラスメートとじっくり話をしたい』というメッセージ。
僕は丁寧なお礼と共に“クラスメートにも話します”というメッセージも書いて返信した。
翌朝。9月25日 木曜日。
「たっくん、新しい情報なんだけど」
登校するなり、秋ちゃんが話しかけてきた。
「どうしたの?」
「今朝姉から聞いたんだけど、6組の、酒本子愛さん、が本部役員立候補を考え始めて動き出したらしい」
秋ちゃんの言葉に飛鳥ちゃんや操ちゃんがすぐに反応する。
窓際で本を読んでいた綾ちゃんまでもがこちらを見てくる。
「それってマズくない?」
僕らの間に割って入ってきたのは有佳ちゃん。
「今のところはまだどっちの立場なのか…」
「そういう問題じゃない、アイツは選挙どうこうよりもたっくんを潰すことを考えてるはず…」