君の人生、変えてあげる。 339
自分の描いているプランを述べる。
伊織ちゃんがそれに従いメモを取っている。
「知らないうちにたっくん、いろいろ考えてたんだね」
「数日前にやっと考えてできたことなんだ、まだちょっと不安だけど」
「全然。素晴らしいと思う」
「演説文、2,3日もらえればいいのが作れると思う。なんかゴーストライターみたいだけど」
伊織ちゃんが笑う。
「あの、たっくん」
飛鳥ちゃんがたずねた。
「前『変化しても大丈夫です』だけでは理解は得られないかも、って言ってなかった?」
そうだ。母さんと話して、共学化のメリットも話さないと単に「理事会都合で共学化するんでしょう」と言われる、って言われていたんだ。それは飛鳥ちゃんには話していた。
「うん…それは、僕の立場だけではなかなかいい言葉が無くて」
「じゃあ、その部分は私たちが考えるから…でも一組だけの意見だと客観的じゃなさそうだから、みどり、渚、可憐もちょっと手伝って。あとここは二年の先輩にも入ってもらった方が良いな」
2年の先輩…磯村先輩と、あと小山内先輩か。
黒田先輩や景さんにも相談してみようかな。
景さんは放課後にでも…
「次の会議は先輩方も交えてやろう。たっくん、いいかな?」
「うん」
お昼の会合はこうして締められた。
午後の授業も終わり、僕は寮の景さんの部屋に向かう。
以前景さんに聞いた話だと、現在寮を使っている生徒は数人しかいないらしく、出入りに関してそう厳しく管理されてはいないという。
「ええと…あっ」
ドアに張られたプレートを確認…
『すが ひかり』
ひらがなの上になんだか丸っこい可愛らしい文字。景さんのイメージとはあまり結びつかない。
インターホンを押しても反応がなく、ドアノブを捻ろうとすると鍵がかかっている。
「あれ…おかしいな…」
確かいつでも大丈夫だ、と聞いていたのに…
「あっ、拓真くん、ごめん」
不思議に思ったとたん、景さんがやってきた。
スマホ片手に険しい表情…まさかと思い咄嗟に尋ねる。
「何かあったんですか?選挙で不利な状況とか…」
「??…あ、あぁ、いや、それは関係ないさ」
きょとんといた後、景さんは少し恥ずかしそうに頭をかく。
「拓真くんはやってないか?……その…ポケモンGO…」
「えっ?」
「近くにまだ捕まえてない、レアなやつがいて、それを見つけたのはいいんだけど…逃げられた…」
「それは、残念でしたね」
もちろんこのゲームは知っている。が、発売になった7月には僕はほぼ引きこもっている状態だったのでリアルでの盛り上がりからは距離があった。いろいろ出歩いて、というゲームをやろうという気分では、その時の僕はなかった。
「この辺よく出るんですか?その、何とかスポットみたいな」
「ちょっとそんな感じ」
「ここに来たい人が多かったのでは、その、外から」
「塀の外でも取れるからそれは大丈夫」
景さんは窓の外に視線を移した。
「でも塀の脇に来る人たちが不審者なのかポケモンゲットしに来た人なのかよく分からない、っていう感じが一時期あったかな」