君の人生、変えてあげる。 334
「あ、ありがとうございます…」
その用紙を受け取ると、綾ちゃんがボールペンを渡してくれた。
自分の名前、学年クラスなどを記入して古代先輩にもう一度手渡す。
「お願いします…!」
「うん、しっかりと受理した」
そう言うと柔らかな笑みを浮かべる古代先輩。優しそうな人だ。
古代先輩はそのまま景さんに近づき肩をポンと叩く。
「景、お前らしくない行動だったじゃないか」
「お前の気にすることじゃないだろう」
「ふむ、彼に特別な感情があるのだな?」
「…!!」
「お前には関係ない」
景さんはそういって食堂の出口に向かっていった。
「たっくん、そう…他の立候補する人とか、あと黒田先輩にも連絡した方がいいんじゃない」
飛鳥ちゃんの言葉に、僕はすぐにスマホを取り出して事情を説明した。
黒田先輩や磯村先輩、操ちゃんなどなど、選挙で僕に関わり味方してくれる人に一斉にその旨を述べるメールを送る。
「ここからが本当の戦い」
綾ちゃんが言う。
「私は選管委員だから特定の人物の応援はできない。でも、たっくんがベストを尽くして頑張って欲しいと思っている」
「ありがとう」
僕は綾ちゃんをまっすぐ見てそう言った。
綾ちゃんはちょっと笑顔を見せ、食堂の出口へと歩いて行った。
これから始まる戦いの序曲が、頭の中で響いていた。
「酒本君、大丈夫?」
深沢先生が小走りでやってきた。やはり先生が呼ばれたようだった。
「大丈夫です」
先生の登場によって野次馬と化していた人たちは次第に離れ、元の食堂の状態に戻っていく。
「ここにはいろいろな考えを持っている人がいる。酒本くんを良く思っていない人もいるかもしれない…もし困ったことがあれば何でも相談してね」
「はい」