君の人生、変えてあげる。 330
転々とするボールに一目散に駆ける。
栞ちゃんと莉緒ちゃんも接近するが、僕が一番最初に追いつく。
そのままの勢いで2人をドリブルでかわし、突破。
「たっくん、そのまま行っちゃえ!」
後ろから有佳ちゃんの声。
ゴール下でディフェンスする楓ちゃんをかわしてシュート、ボールはリングに嫌われることなく吸い込まれた。
「やった!」
「たっくん、今日初ゴールじゃん」
有佳ちゃんがそう言い、他のチームメイトも拍手。
そしてすぐに胡桃ちゃんのスローインで試合再開。余韻に浸る暇はない。
そう、得点がたくさん入るバスケットボールのゴールなんて、小さいことだ。でも、僕にとっては大きかった初ゴール。
僕にもゴールできた。また、ゴールできるんだ!
こんなことを一瞬で考え、僕は再びパスを受け取りゴールを目指す。
結局、この試合の得点の三分の一くらいは僕が上げてチームの一勝に貢献した。
授業の時間内にできた試合はそれまでで、チャイムが鳴るとみんなで後片付け。
「たっくん、すごいなぁ」
「たまたまだよ」
胡桃ちゃんが肩をポンと叩いて腕を回す。
「いい汗かけたよ」
球技なら活躍の場もあるのかな、なんて考えてしまう。
「天音ちゃんの様子を見に行こうか」
「あ、私も行くよ」
「私も」
僕がそう言うと、飛鳥ちゃん、梨奈ちゃん、凛ちゃんも後についてきた。
保健室に着くと、天音ちゃんはベッドに座っていた。もう、表情からはつらそうな様子はあまり感じられなかった。
「天音、ぶつかってごめん。大丈夫?」
梨奈ちゃんが声を掛ける。
「うん、大丈夫。もう、多分歩ける」
天音ちゃんは脚を床につけようと、体を回転させようとした。
「無理しないで、もう少し安静にしてね」
愛美先生の声。
「しばらく安静にしておいた方がいいよ」
「ノートとかは私が写しておくから」
「ごめんね、梨奈ちゃん」
天音ちゃんはとりあえず昼休みまで保健室で休んでもらうことになった。
僕たちは保健室を出る。
教室に戻っていく途中…
「おお〜っ!酒本拓真くんだあ、ハーレムしてますなぁ」
「ちょ、ちょっと、マギー…」
6組の委員長みっちゃんと、何やら着崩した制服の女の子。
金髪で碧眼なのに流暢な日本語だ。
「マーガレット・エリクセンだよ!気軽にマギーって呼んでくれ給へ」