君の人生、変えてあげる。 324
「あ、たっくん!そう…ちょっと頼みがあるんだけどー」
「理紗!空気読んで」
「あ、うん…たっくん、後で寄って」
「はい…」
文芸部『エロ担当』菊川先輩が僕に気づいてハイテンションに声を掛けてきたが、高森先輩の言葉にすぐに一旦下がった。
改めて、榊原先輩。背が高く髪が短く、ボーイッシュな感じだ。
「君が酒本拓真君だね。よろしく。榊原小春だよ。私は中学まで共学だったんだ。共学も女子高も両方経験した一人として、新しい共学の涼星づくりに関われたら、って思って」
「これで二年の外部生の反対勢力はある程度分断できる」
後ろから声がした。
黒田先輩だ。
さすが景さんも認める策士…榊原先輩の立候補話にも関わってきているのか。
「彼女…小春は運動部の子の支持を取り付けるのにはぴったりの存在。これで反対派の方も心が揺れる人が出てくるんじゃないかな」
「勝代はいろいろ考えるもんだね…」
「小春が一緒に立候補してくれるなら心強いよね」
磯村先輩もやってきた。
「これは全体で調整したほうがいいと思うからまだあんまり決めてないんだけど、小春とは書記と会計で役職を分けて立候補しようと思う」
僕は、以前“同じクラスで同じ役職に立候補すると票が分散してしまうので避けよう”のような会話をしたことを思い出していた。
「あと、それで…ちょっとこれは教室を出て話そう」
僕たちは教室を出て、近くにあった何かの準備室に入った。
「そろそろ、先手を取るのはどうだろう?」
黒田先輩がおもむろに話し始めた。
「今のところ、反対派から立候補しようとしている具体的な名前は伝わってきていない。それなら、こっちから立候補表明して、選挙の主導権を取るのもいいんじゃないかと、思う」
そのあと、僕も以前に聞いたことがある“補欠選挙の日程は、だれかが立候補の届を出したら、二週間、他の人の立候補があるかどうか待って、その後二週間選挙運動、そして投票日、となる”話をした。
「あの、こっちの準備は、まだちょっと…」
「一年生からの立候補者はそろっているでしょ。共通公約もできているし」
「はあ」
「あと、二年生の後半クラスからの立候補はほぼメドがついているから安心して…それで、何をもって準備完了になるか、今一度確認してみるほうがいいと思う」
黒田先輩は淡々とそのようなことを言った。
そういわれてみると、正式立候補を待ったのは二年生の先輩に協力してもらうため、が最大の理由だったかもしれない。
「一度僕らに近い立候補予定の人たちで集まって話をしたいですね」
「うん、近日中にね。そうしたら候補者のポスターとか選挙運動も始めていこう」
黒田先輩は少しだけ微笑んで言った。
「あと、後半クラスからの候補の子も紹介しておこうかな」
黒田先輩が紙とペンを取り出す。