君の人生、変えてあげる。 323
「たっくんは旧棟って知ってる?」
「旧棟?」
「以前教室として使っていた校舎。そこに家庭科室があって、そこを使ってる」
「へぇ…」
「まあ、詳しい話はあとで。少なくとも、反抗勢力ではないと私は見ている」
景さんを通じて知った、というなら、確かに。
予鈴が鳴って、僕たちは教室に戻った。
「…今日は、都合により6時間目の体育は自習になります」
深沢先生は連絡事項の最後にそう言った。
休み時間、僕は歩ちゃんに声を掛けた。
文芸部の先輩の何人かが、さっき話に出た2年1組だったような気がして、誰がそうだったか確認しようと思って。
「うん、黒田先輩はじめ、磯村先輩、高森先輩、そんで、菊川先輩も」
この中で、誰に榊原先輩のことを訊いてみよう?
「昼休みなら皆さん空いてるだろうからちょっと連絡取ってみようかあ」
「うん、ありがとう。助かるよ」
歩ちゃんに頼むと、次の授業終わり。
「高森先輩と約束を取り付けたよ」
「ありがとう」
「でね、生徒会選挙に出るつもりって人を紹介しようかって。昔からの親友なんだって」
「それって…」
「榊原さんって人」
昼休みになる前に「選対本部長」飛鳥ちゃんにこの話をした。飛鳥ちゃんも昼休みのアポイントメントに来たいようだったがちょっと都合が合わないようだった。
昼休み、歩ちゃんと一緒に2年1組に向かう。教室を出るとき、ちょっと香里ちゃんと目が合った。淋しそうな顔。
昨晩の“生徒会役員になると遠くに行っちゃう”のメッセージをちょっと思い出した。
歩ちゃんが先に入って、今入っても問題ないことを確認した上で、僕も2年1組の教室に入った。
「よおっ、こっちだよ〜」
教室に入ってすぐ、高森先輩が僕に向かって手を振ってくる。
その後ろの席、肩くらいまでの髪の女子生徒、あの人がもしかしたら…
「お久しぶりです」
「うん、あの休日以来だね」
「突然でしたけどありがとうございます」
「いいのいいの、酒本くんとは長い付き合いになりそうだし?…で、こっちが例の子ね、榊原小春」