君の人生、変えてあげる。 311
僕はみっちゃんは外部生で共学を通ってきた話も聞いたような気がした。だとすると、初等部に入った後何らかの事情で途中で公立に行って、高等部でまた戻ってきた、とすれば辻褄が合う。
そういう複雑な事情が、今のみっちゃんの雰囲気に関係しているのかもしれない、と思った。
「もう少し話してみると、何かいい方向にいくかもしれないね」
「そうだね。さすがたっくん!」
雑木林を左に見ながら通過する。ここから先は、まだ一度も来たことがない。
鬱蒼とした雑木林から視界が開けるとほとんどは田畑。
ああ、こっち側は建物はあまりないわけか。
「たっくん、あのさ」
「うん」
「私の家…行かない?もうちょっと、一緒に話したいなって」
「うん、いいけど…ここから近いんだ」
香里ちゃんが隣に並んできて、手をつなぐ。
数分歩いて、だれとも、車ともすれ違わず、いくつかの建物があるところに着いた。
香里ちゃんはその中の1つの前に立って鍵を開けた。結構大きめの家。
「ただいま」
何の反応もない。
「親は夜まで帰ってこないけど、なんとなく言っちゃうんだ」
何か、帰って安心したような表情。それは、これまで見たどの雰囲気とも違うものだった。
「学校から近いんだね」
「おかげでギリギリまで寝ていられたり、とかね」
悪戯っぽい笑顔、ようやく香里ちゃんらしいところが見れた。
「ご両親はお仕事?」
「向こう側に工場があったでしょ、あそこで働いてるの」
OとAとIを組み合わせたエンブレムを掲げた大きな工場があった。
かなり敷地は広くて、滑走路まであった。
「大阪航空工業…あの大航?」
「お父さんは技術者で、お母さんはプログラマー」
大阪航空工業の技術者だったのか…
「あの戦闘機造ってるの?」
この部屋にも飛行機の模型が置いてある。現代的な、でも特徴的な形…機体はあまり大きくないけど、エンジンは2つ並んでる。F/A-60。F-2の対抗馬にして、結局両方が採用された大航の純国産ジェット戦闘攻撃機。