君の人生、変えてあげる。 32
「あっ、えっ、えっと、ごめんなさい」
理恵子ちゃんはまた顔を赤くさせてしまう。
なるほど、彼女は鉄道マニアの女子…いわゆる『鉄子』か。
以前どこかで聞いたことがある。
でも、普段口数が少なそうな子が好きなことには熱くなるってのは見ていて可愛らしい。
これで、宿泊研修の不安も取り除かれたような気がする。
「ねえ、部活考えた?」
歩ちゃんが近くに来て話しかけた。
「うーん、まだなかなか」
今晩くらいには部活のパンフ見てみよう。
「あまり、深く考えないで、来週月曜にでも、文芸部来てみない?別に、来たら強制的に入れたりはしないよ」
「そう?なんかちょっと不安なところはあるけど…」
「問題ないよ。たっくんが転校してきてから、先輩たちみんな興味あるみたいで質問攻めでねー」
「へえ…そうなんだ…」
「みんな優しい人だから、すぐに仲良くなれるよ」
「そっか…じゃあ来週見学してもいいかな?」
「みんな喜ぶんじゃないかな?」
「うん、じゃあお邪魔させていただくよ。何か持っていくものはある?」
「とくに無いよ。じゃあ、来週楽しみにしてる♪」
ここで歩ちゃんとの会話は終わった。
英語を教えてもらおうと思っていた奈緒ちゃんに挨拶に行った。
英語のことは、まだあまり具体的なことは話さなかったが、英会話部に来て慣れるのも一つの手かも、のようなことを言われた。
いきなりそれはちょっとしりごみしてしまう…
「たっくん、運動部とかは考えてる?」
部活の話が聞こえたのか、沙羅ちゃんがそう話しかけた。
「えっ、男子一人だと難しいかなあ、とか思ってどっちかというと文化系がいいのかなあ、と思ってる」
沙羅ちゃんはすかさず言った。
「マネージャー、っていう選択肢もあるよ」
マネージャー…
一般的な、雑用係のようなイメージ、数年前にはやった、マネージャーが昔の偉い人の「マネジメント」という本を読んで野球部を強くしていくイメージ、の2つが相次いで浮かんだが、どちらも僕には向いていそうになかった。
僕の否定的な表情を読んだのか
「じゃあ、よかったら」とだけ言って沙羅ちゃんはその場から離れた。
部活とか、塾とかで、だんだん人が少なくなって、教室の中には数人だけになった。