君の人生、変えてあげる。 309
帰りの電車では行きとは明らかに異なるくらいにふたりくっついて座った。
地元の駅に戻って、軽く夕食を食べる。
この間。あまり後まで覚えているような特別な話はしなかったが、自然に楽しかった。
「じゃあ、また明日」
「また明日」
家に帰った頃には空はもう真っ暗に近くなっていた。
母さんは特に何も言うことはなかった…でも
「今日はすごくいいことがあったみたいね」
この一言には、笑顔を返すだけで答えになっただろう。
ぐっすり眠ることができて翌日、学校。
「おはよう」
「たっくん、おはよう」
みんないつも通り。もちろん飛鳥ちゃんも。
四時間目の美術が終わって昼食。
昼食の時は、歩ちゃんたちとはだいたいいつもいる。他のメンバーは固定的ではなく、今日は飛鳥ちゃんや香里ちゃんとも一緒のテーブルで、たまたま香里ちゃんと隣になった。
香里ちゃん、どこか、緊張しているような感じがした。
いつもと違うその様子には薄々気づいていたものの、周りに他の子もいるから話は切り出せなかった。
後から乱入してきた海里ちゃんが大好きなプロ野球チームのことについて熱弁を振るいそれで時間は終了。
(ちなみに海里ちゃんが好きなのは先日シーズン優勝を果たした広島のチームらしい)
食器を返却して食堂を後にしようとすると
「たっくん、ちょっとお話いい?」
「うん…」
香里ちゃんに呼び止められた。
香里ちゃんはきょろきょろしているように見えた。
「あの、これ。メッセージ送っていい?」
香里ちゃんはスマホのチャットアプリを示した。
確か、何人かのクラスメートとID交換したときに香里ちゃんとも交換したのだった。でもまだやりとりは香里ちゃんとはない。
「えっ、あ、もちろん…うれしいよ」