君の人生、変えてあげる。 304
「たっくん、初めて会ったときより大きく見えるな」
「そうかな」
後ろで飛鳥ちゃんが言う。
まさかこんな短期間で急速に背が伸びたり筋肉がつくはずがない。
多分気持ちの問題だと思う。僕も最初は不安だらけだった。
「そんなたっくんが好き」
飛鳥ちゃんが同じように服を脱いでいく。
先に全部脱ぎ終わった僕は、一つしかない洗い場で軽く体を洗って、湯舟に使って飛鳥ちゃんを待った。
適度に熱くなく、長く入っていられそうな湯だった。
ほどなく、同じようにして飛鳥ちゃんが入ってきた。
僕たちは、どちらからともなく並んで海の方を見た。
目の前で見るのとはまたちょっと違う、景色のいい眺めを見ながらお湯に浸かる。
数人の子供たちが砂浜にいる。
さっきの子たちだろうか。
「たっくんは、昔からの友達って付き合いある?」
飛鳥ちゃんが唐突に尋ねる。
「もうほとんどないかな…友達がいたかどうかも怪しい」
「そっか…私は初等部から涼星にいるから、ずっと一緒の子が何人かいるんだ」
「そうだよね」
「中でも、香里とは一番付き合いが長いかな」
香里ちゃん…僕の頭の中に香里ちゃんのイメージが駆け巡った。
涼星に着て、飛鳥ちゃんに次いで二番目に話した子。会うたびにイメージが違うと思ったこともあった子。そんな最初から知っている割には、実はあんまりちゃんと話してはなかった子。
「香里ちゃんが付き合い長いんだ。初等科の一年生から一緒だったとか」
「うん」
飛鳥ちゃんは窓の向こうの海を見ながら話す。
「香里もたっくんと仲良くなりたい、ってずっと思ってるよ」
「そう…かな」
「初対面で香里があんな顔するなんて思わなくてさ。それ以来たっくんの気を引こうといろいろやってるのかなぁって」
「そんな」
眼鏡がコンタクトになったり、また違う眼鏡になったり。
髪型も初対面の三つ編みがストレートヘアになって、さらにバッサリ切ってショートカットになったり。
いろいろ違う面を出してくるけど、どれも全部魅力的だと思う。