君の人生、変えてあげる。 303
僕たちはしらす丼を堪能した。
「うん、おいしかったよ。ありがとうね」
「叔父さんに感謝かな」
僕たちはその食堂を出た。周りの大人はビールとか飲んでいる人もいるのであまり客が回転している感じではないが、僕たちはこれ以上いる感じではなかったのでどちらからということもなく店を出ることにした。
そのあとは飛鳥ちゃんの提案でちょっと歩いて水族館に行った。
小規模な水族館でそんなに人もいなかったがそれなりに見られた。
その後、だんだん日が西に向かっているような時間、 僕たちはあまり言葉を交わすことなく、僕は飛鳥ちゃんについていくように歩いた。
「ここからは、私も行ったことないんだけど…」
飛鳥ちゃんは一瞬言葉を切って言った。
「この先のスーパー銭湯に、家族風呂があって…」
飛鳥ちゃんがそう言いながらまた口ごもる。
…なんとなく言いたいことが読めた、ような気がした。
「行ってみる?」
「…たっくんがいいなら」
「じゃあ、行こう」
飛鳥ちゃんの手をそっと握る。
「ありがと…」
小さな声で飛鳥ちゃんが言ったのを、聞き逃すことはなかった。
僕たちはそのスーパー銭湯に入っていった。
日曜だけに、割と賑わっていた。
僕は無言でまっすぐ、家族風呂などの受付に行った。
“18歳未満のお客様のみのご利用はできません”とは書いてあったが、いつかの同人誌を買ったときのように、特にとがめられることもなく、また、満員で待つこともなく、家族風呂の鍵がわたされた。
「案外すんなりと行くもんなんだな」
そう呟く僕の隣で飛鳥ちゃんはよそよそしくうつむきながらついて来た。
「飛鳥ちゃん?」
「ふああっ!?」
声をかけると変な反応をされた。こっちがビックリするじゃないか。
「ご、ごめん、たっくん…」
…ああ、この反応、前に文芸部の皆さんに会いに行ったときに近いような気がする。
そうすると、今日ここまでは僕がついてくる感じだったが、僕から進んでいくことになるのだろう。
そして、家族風呂の扉を開けた。
脱衣室の向こうはガラスの扉で、海が見える浴槽が見えた。
「きれいだね」
「うん…」
僕は躊躇なく上半身の服を脱いだ。