君の人生、変えてあげる。 298
梨奈ちゃんにも聞こえたのか、こちらの顔を伺う。
僕は慰霊碑に向かって軽くお辞儀した。梨奈ちゃんもそれに続く。
「やっぱり、その2人なんだね」
「これからは彼女たちのことも考えないといけないかな」
自然と笑顔になる、そんな気がした。
梨奈ちゃんと別れ、家に帰る。
帰りながら、今回は体の傷について誰にも直接には言われなかったことを思い返す。
それはそれで、助かることだったけど。
夕飯の時、母さんに今日のこと(もちろん梨奈ちゃんとのことは大幅に除いて)を話した。
母さんは事故に遭った先輩姉妹のことは聞いて知っていたようだった。
「水泳部の間では代々伝わってきた話だよね。慰霊碑もその後に出来たし」
「母さんは聞いたことある?」
「私は水泳部じゃないから…聡美はずっとそこの管理をしてるし、花も添えてるって聞いたよ」
理事長の聡美さん…か。
夕食を食べて部屋に戻る。
机に置いたスマホにメールが…飛鳥ちゃんだった。
それそのものは何ということはない内容で、もしかしたら返信しなくてもいいかもしれないようなものだった。
飛鳥ちゃんが頭に浮かぶ。
この学園に来てから、僕は毎日クラスメートと会っていた。そしてしばしば濃密な関係になっていた。
土日も。先週は土曜は胡桃ちゃんとか茉莉菜ちゃんとかとプールに行って、日曜は歩ちゃんとか文芸部の人たちとオタクの街に行ってきた。
そしてその前の土日は…飛鳥ちゃんと過ごしたんだった。
明日、この学園に来てからはじめて、クラスメート誰と会う予定も無い日なんだ…
何もせず家でゆっくりするのもいいだろう。
転校してから今までがあまりに濃密過ぎたんだから、たまには…
でも、飛鳥ちゃんは果たしてどういう気持ちなのか?
僕の方から誘ったら…
そう決めたら早速飛鳥ちゃんに返信する。
明日は暇か、よかったら僕も…なんて。
そう送るとすぐに返事が返ってくる。