君の人生、変えてあげる。 284
ご飯をたべおわって、僕と梨奈ちゃんはプールに向かった。
「この部屋を部室として使ってるんだ」
梨奈ちゃんは室内プールの建物のドアの一つを指して言い、それからすぐにドアを開いた。
「おはようございます…あ、これが始まりのあいさつ。時間に関係なく」
梨奈ちゃんは部室の中に向かってあいさつし、それからちょっと僕の方を向いて小声で解説してくれた。
「おはよう…梨奈、ほんとに男の子来たんだ!」
向こうを向いて、競泳水着を着がえ中で下半身だけつけた状態だった人が、あわてて上半身分もつけて僕たちの方を向いた。
「あの、やっぱり入ってきちゃまずかったですよね」
「そんなことないよ。ようこそ水泳部へ。私は部長の三浦聡美。2年生」
ボーイッシュな短い髪の方。僕よりも背が高そうだ。
すぐ隣で梨奈ちゃんが制服を脱いで着替え始める。
「よろしくお願いします」
「かしこまらなくていいよ。うちはなるべく上下の壁を取り除いていこうと思っているから」
話を聞きながら周りを見渡す。
皆水泳の授業とは違う専用の水着を着ていた。
なんだか皆速く泳ぎそうな感じの水着だ。
「ええと、酒本君、でいいのかな」
「はい」
「今日は見学かな?それとも泳いでいく?」
「聡美先輩、私、たっくんをトレーニングに、って呼んだので、もちろん泳ぎます」
僕が応える前に、もうほとんど脱いだ梨奈ちゃんが応えた。
「ええと、酒本君にはどこで着がえてもらおう」
「うちのクラスでは、みんなで着がえてるから、ここで大丈夫です。ねえ、たっくん」
「うん」
「酒本君、私たちがいても大丈夫?外出ようか?」
三浦先輩はまだ心配そうな顔をしながら尋ねる。
「大丈夫です。クラスの体育の授業の時もみんなで一緒に着替えてますから」
「そう」
僕が自信を持って答えたのを見て、手を止めていた子達も着替えを再開し始めた。
少し視線は感じたが手早く海パンをはくと、梨奈ちゃんに案内される形でプールに向かう。
プールサイドに出て、朝礼的な感じになる。
「今日は、1年1組から、酒本拓真君が練習に加わってくれました。じゃあ、酒本君、簡単に自己紹介を」
「ええと、酒本拓真といいます。ええと、り、いや、小室梨奈さんと同じクラスから来ました。水泳経験は、学校の授業くらいしかないのですが、今日は、申し訳ないのですが、ちょっとトレーニング的に、参加させて頂けますか?」
他の全員から拍手があった。
「私は北島恭子。2年1組。よろしく」
「あたしは。入江夏実。美術の時間に会ったことあるよね」
「荻野香奈子。1年5組。酒本君のことは、噂には聞いていたけど、今日初めて会って、ちょっと緊張してるかも…です」