君の人生、変えてあげる。 272
「それはやっぱり、本人がどうか、じゃないかなあ」
「そうだね」
遥ちゃんはそう言って、真面目な顔になって、さっき僕が“この子かな”と思った人に近づいて小声でなにか話した。
「たっくん、来て」
遥ちゃんの声に僕は近づく。
「あの、はじめまして、藤澤未華子です…なんか、迷惑かけちゃって、ごめんなさい…」
「迷惑とかなんてそんな…」
選挙に出るというくらいの人だからもっと気の強くて向かってくるような人だと思っていたら、実際にはそのまったく逆だった。
「改めて、僕、酒本拓真といいます」
「はい…今回はホントに、何て言ったらいいか…」
「よくわからないので、話を聞きたいかな…藤澤さんとは争ったりするつもりはないし、こういう機会があったらわかりあえると思ったんだ」
「うん…あたしも、話す機会あったら、と思っていたよ……実はあたし外部生で、ここの空気、まだ読めてないところがあったんだ…」
そのうちに、先生がきた。
「よかったら、今日昼休み、あたしたちとごはん食べる?」
「いいの?」
「うん、食堂のこの辺にいるから」
藤澤さんは食堂のだいたいの目印を言って、授業の準備を始めた。
僕も席に着いた。
モデルの陽菜子ちゃんはもうすっかり脱いでいた。
他の、モデル側で脱ぐことを選んだ人も大半はもう脱いでいた。
「ポーズはこんな感じでよかったかな」
「うん」
続きから描くから、ポーズが同じになるように協力してくれている。
僕は、藤澤さんの方をちらっと見た。藤澤さんは、描く方の順番だった。
藤澤さんとペアのモデルは遥ちゃんらしい。
遥ちゃんも飛鳥ちゃんたちの気持ちに押されたのか服を脱いでいた。
僕の視線に気づくと軽く微笑んでくれた。
ちょっとだけ彼女とうまくやれそうな気がした。
いよいよ昼休み。
「私も一緒でいいかな」
「うん…遥ちゃんもいるみたいだし」
僕は飛鳥ちゃん、香里ちゃんと一緒に食堂に向かった。