君の人生、変えてあげる。 257
歩ちゃんはまだ気持ちよさそうに眠っていた。
僕はシャツとパンツ、それに上下のジャージを着て朝風呂の準備をする。
「たっくん、準備できたら行くよー」
「うん、もうちょっとだから、ごめんね」
一緒に行くのは凛ちゃんと伊織ちゃん。
朝の大浴場は人も疎ら。
でもそのほうがかえって気兼ねなく入れていいかもしれない。
「おはよう!」
昨日に続いて朝風呂で飛鳥ちゃんに会った。
明るく挨拶してくれたが、昨日の晩は飛鳥ちゃんの言葉…多くの人と会うためにあまり深いことはしないほうが、的な…を守れていなかったのでちょっと気まずい。
「…おはよう」
僕は多少伏し目がちに応えた。
「…?たっくん、具合悪い?無理しなくてもいいよ」
「い、いや、そうじゃなくて…」
「ホントに?」
「うん、大丈夫だから」
顔に出したらダメだとはわかってはいるが、僕は人に嘘をついてい続けられるタイプじゃない。
「じゃ、たっくんの背中流すから」
伊織ちゃんが僕の腕を引きながら言う。
「え、あ、うん、ありがとう」
僕は導かれるまま椅子に座った。
伊織ちゃんはお湯を用意して、少しだけ僕の背中にかけた。
「熱くない?」
「ううん、大丈夫」
伊織ちゃんは改めてゆっくり僕の背中にお湯をかけていった。
「汗かいたでしょう」
「うん、まあ…」
伊織ちゃんは深くは言わないけど、汗をかいたのはまあ、いろんな意味で…
「大丈夫だよ、アスには誰も絶対言わないから」
「う、うん…」
「私だってその一人なんだから」
「うん…」
「たっくん、伊織、おはよ。隣いいかな?」
「ああ、いいよ」
隣に椅子を置いて座るのは由佳里ちゃんだ。