君の人生、変えてあげる。 217
「あれ、大丈夫だった?」
「うん、大したことじゃないよ」
由佳里ちゃんは笑っている。
「由佳里はちょっとドジっていうか」
「純菜、それ言わないでよう」
そんな由佳里ちゃんを純菜ちゃんが茶化す。
「みんなは午前中何をしてたの?」
ちょっと気になった。
柚希ちゃんは歩きながら地図を示した。
「私たちは、ここから登り始めて、ここでたっくんと合流したんだよ」
見ると、その、柚希ちゃんたちが登り始めた場所と僕がバスで行ったところの高低差は、そこから今の場所よりも大きかった。
「こんなに歩いてきたんだ!大変だったんだね…」
「普通の一日のコースだから、大丈夫だよ」
とは言っているものの、僕はずいぶん楽していることは間違いない。僕はしばらく黙々と歩いた。
そして、視界が開けた。
「はい、ここが、今日の目的地!」
「おおぉ…」
ちょうど西日が、岩の壁をいっぱいに照らして、真っ赤に染まっている。
「すごいでしょ」
「うん…」
目の前の綺麗な景色を見て、言葉に出来ないくらいの感動を受けた僕に、柚希ちゃんが笑顔で言う。
「こんなの、滅多に見られないよね」
「そうだね」
梨奈ちゃんや文乃ちゃんも言う。
「国内で、簡単に行けるところで、こんな景色は滅多にないよ」
「さすが柚希ちゃんだよ」
柚希ちゃんの説明に、沙羅ちゃんがそう答えた。
僕たちは、壁に夜のとばりが降りていくまで、その風景を目に焼き付けていた。
ここからは、ロープウエイ、バスで一気に下界へ、そして宿へ、と戻った。
「汗かいたね」
「夕食前にシャワー浴びよう」
皆、口々に言う。
「…あ、たっくんは、9時まで浴びられない…」
沙羅ちゃんが気づいて、そう言った。
「大丈夫だよ」
僕が言った時とほぼ同時に、前から飛鳥ちゃんが現れた。
「あ、たっくん、ちょうどよかった」
「お風呂のルール、ちょっと変えてもらったんだ。たっくんは、きのう入った方のお風呂に、どの時間でも入れる。あと、クラスの制限は、なくした」
「ほんと?」
「うん、後半クラスでも、たっくんと交流したい希望があって。あと…」
飛鳥ちゃんはちょっと言いにくそうにした。
「2組の藤澤美香ちゃん、覚えてる?着替えのこととか不安に思って生徒会役員立候補を考えた人」
「うん」
「美香ちゃんとかも、時間にかかわらずゆっくり入りたい希望があって、それでそういう分け方に…つまり女子専用のお風呂とどっちでも入れるお風呂と…になったんだ」