君の人生、変えてあげる。 213
「じゃあ、気を付けてね」
「ありがとうね。楽しかったよ」
僕は、飛鳥ちゃんたちと別れて、バス停に向かった。
バスは、あらかじめ調べていた通り、そんなに待たずに来た。
平日の昼間のバス。だんだん人が降りていって、最後には乗客は僕一人になった。
目に見えて標高が上がっていく。
登山やハイキングで人気がある場所とはいえ、平日にやってくる人はいないのだろう。
それでも、乗客が自分一人になってしまうとやっぱり不安になる。
しばらく外を眺めていると、バスが目的地に到着し、停車した。
すぐそばには、沙羅ちゃんたちが待っていた。
「おまたせ。待った?」
「全然。時間通りだよ」
バスを降りると、確かにちょっとひんやりした。僕はザックから上着を取り出して、羽織った。
それにしても、ワンゲルの柚希ちゃんの装備は本格的に見える。帽子から、靴まで。ザックなのは皆同じだが、柚希ちゃんのものはそのまま何泊もできそうな大きながっしりしたものだった。
それを見ると、もしや、本格的なものだったりするのじゃなかろうかとも思ってしまうのだが…沙羅ちゃん含め、他のみんなは僕と同じように軽装。
「そんな心配しなくていいよ」
柚希ちゃんが笑顔で言う。
「ハイキングコースは初心者用だから…多少体力に不安があっても大丈夫。この荷物は、もしみんなに何かがあったときのためだから」
「そうなんだ」
やはりさすがワンゲル部なのだなあ、と思った。
「たっくん、まず、ここの展望台を見てみよう」
柚希ちゃんが言う。
そう、降りたバス停は「展望台」だった。
僕は柚希ちゃん達についてちょっと階段を登る。