君の人生、変えてあげる。 209
「綾ちゃん、詳しいね」
「私は興味があったらすぐ調べる」
そうか、こういうのに興味があったんだ。
「この時代って、この辺はどんな感じだったんだろうねえ」
飛鳥ちゃんが窓の外を眺めながら言った。
「大陸の一部だった」
綾ちゃんは応えるが、そういうことを訊きたかったのだろうか?
「あ、それって、南と北が大陸とつながっていた、っていう?」
秋ちゃんがひらめいたように言うが、
「それはもう少し後の時代」
綾ちゃんはいつものように淡々とした口調で説明してくれる。
「もっと前の時代は、世界はひとつの大きな大陸だった」
「うん」
それが何度も時を分けて、徐々に別れていったんだっけ。
そんな話をしながらみんなで次のブースへと歩いていく。
今度は恐竜の等身大のレプリカがあったり、スクリーンに映像が映し出されている場所。
「恐竜たちが実際どんな身体の色をしていたかはわからない。今あるのはあくまで科学者たちの想像によるもの」
綾ちゃんはさらに続ける。
「この映像では、恐竜は爬虫類に近いような外観で描かれているけど、最近では、羽毛に覆われていたかも知れない、という説も出て」
「えー、知らなかった」
僕も、目の前の映像を、羽毛に覆われた姿に頭の中で切り替えようとしたが、うまく浮かばなかった。
「絶対に正しいことはない。正しいことは、移り変わることもある」
綾ちゃんはいつものように淡々と、そう続ける。
「そうだね」
それに応じたのは飛鳥ちゃんだ。
「綾ちゃんの言うとおりだよね…絶対に正しいことはないって。たっくんも、これから迎える大事なことに、きっとそう思うはず」
「なるほど、そういうことか」
綾ちゃんが飛鳥ちゃんの言葉に頷く。
「でも飛鳥、今その話はちょっと違うな」
綾ちゃんは飛鳥ちゃんに釘を刺すように言った。
「やっていることが、正しくないと分かったなら、それは潔く認めなくてはならない。でも、そうでないなら、正しいと信じた道を、曲げないで」
綾ちゃんは、僕と飛鳥ちゃんをしっかり見据えて、そう言った。
「そうだよね…うん、さすが、綾ちゃん」
飛鳥ちゃんは大きく頷く。