君の人生、変えてあげる。 21
「はい!優しくするように、気を付けます」
僕は、直立不動のまま、そう答えた。
菜々子先生の視線が、僕の下の方を向いているような気がした。
先生は、いたずらっぽい表情で、こう言った。
「よかったら、先生が、練習台になろうか?」
「は、はい!?」
予想外の言葉に、オーバーアクションで答えてしまう。
「ふふふ、私じゃ嫌かな?」
「そ、そ、そんなことありません」
せ、先生は、とても魅力的な女性ですから…
「自分勝手でごめんね…私も、誰かに優しくして欲しくて、気を紛らわせたくて…」
「…何かあったんですか?」
「ついこの間、婚約を破棄されたの」
菜々子先生が、寂しそうな顔でそう言った。
「そう…だったんですか…先生のように魅力的な人をどうして!あ、ごめんなさい、聞かない方がいいですよね…」
「そんなことないよ。酒本君も、言いにくいことを話してくれたし…じゃあ、もしよかったら、服を着て、このコンビニで待ってて」
菜々子先生はそう言うと、立ち上がって、近くのロッカーを開き、着ているトレーニングウェアを脱ぎ、スカートとかを取りだし始めた。
…昨日の胡桃ちゃんのときと何か似ている気がするな。
とはいえ、菜々子先生の好意を無駄にはしたくないし、また先生を元気づけてあげたい気持ちもあった。
僕も脱ぎ散らかした服を着直して、言われた待ち合わせ場所へと向かう。
そのコンビニでぼんやり雑誌の棚とかを眺めながら涼んでいると「酒本君」と声がかかった。
Tシャツにスカート姿の菜々子先生だ。
先生に導かれて車に乗る。可愛い感じの軽だ。
10分くらい走っただろうか。あるマンションの前に着いた。
「ここが私の部屋」
僕は無言で、先生についてエレベーターに乗り込んだ。
「ちらかっててごめんね」
先生はそう言うけど、全くそのようなことはなかった。
大人の女性の部屋って、多分初めて入ったと思う。
あまり、飾り気のない、シンプルな部屋だった。
先生は麦茶を出してくれた。