君の人生、変えてあげる。 20
「生徒会に入ると、部活動は出来ないですよね?」
「ん?気になるクラブを見つけた?」
「いえ、そういうわけじゃないんですけど」
純さんは表情変えずに答える。
「生徒会役員になったからって、部活が出来ないわけじゃないよ。こうやって集まるのが毎日、ってわけじゃないし。自分の参加できるときに参加して欲しい、それだけかな」
「はぁ…」
「まあ、今結論を迫ってるわけじゃないから、じっくり考えて欲しい。でも、私は、いい返事を期待してるよ」
純さんはニコリと笑ってそう言った。
昼休みも残り少なくなったので、全員本部室を後にし、僕はみさちゃんと一緒に教室に戻る。
「生徒会本部の役員、考えるの?」
みさちゃんが聞いた。
「うーん、まだ分からない」
5時間目は情報だった。僕たちは教室に戻ってすぐにコンピューター室に移動した。
確かに、ちょっと古めの、動作もあまり快適とは言えないPCだった。
やはりやっていることは初歩的で、問題を速く解くたびに「たっくんすごーい」と言われ、先生からは「酒本君に先生をやってもらおうかな」という冗談も出るくらい、僕にとっては簡単な内容だった。
それでもやはり、そうして周りから称賛されるのはちょっと気分はいい。
6時間目を経て、帰りのショートホームルームで深沢先生が来た時に、芸術科目の選択を聞かれ「美術を選択希望します」と告げた。
前の高校でも美術選択だったので、絵の具とか筆とかは持っている(ほとんど使う機会はなかったが)新たに用意するものはなさそうだ。
放課後、体力測定に行かなくてはならない。
僕は体操着に着替えた。
パンツが見られてしまうことは別にもう気にならなかった。
前の高校の短パンは、色的に、この高校で穿いてもそれほど違和感は無いものなのは幸運だった。
胡桃ちゃんからは、今着替えているのを不思議に思われ「運動部に入るの?」とか聞かれたので「菜々子先生に体力測定呼ばれているんだ」と答えた。
沙羅ちゃんは体力測定の話を覚えていて「頑張ってね」と言ってくれた。
体育教官室の菜々子先生のところに行った。
まず、外で50m走のタイムとか測った後、体育教官室に戻った。
さっきはまだ他の先生がいたが、その時には、もう菜々子先生と僕の二人だけだった。
握力とか上体起こしとかをやった。
「この数値なら、女子のちょっといい方、と変わらないから、体育で女子に混ざっても問題は無いかな」
喜んでいいのかそうでないのか微妙な結果だ…
「じゃあ、最後に身長と体重を測るから、脱いで」
僕は、体操着の上を脱いだ。
「全部脱いだ方が正確に測れるよ」
僕は本来ここで先生のニヤリとした表情を読んで「冗談ですよね」とか返すのが正解だっただろう。
しかし、僕はそこまで空気を読むのが得意ではなく、また昨日の水泳の着替えで、脱ぐことへの抵抗感は薄れていた。
そのため、僕は本当に全部脱いでしまった。
目の前の菜々子先生は胸が大きいが、それを服の上から見ただけでは、そうならない。
しかし。昨日の水泳の時間の連想もあって、僕の下半身のモノは、盛大に上を向いていた。
「酒本君、セックスの経験はあるの?」
「先生…いきなり、そんなことを聞くんですか?!」
「私は保健体育教師よ」
僕は、もちろん、昨日、とか、誰と、とかは言わなかった。
しかし、経験は1回だけあること、その初めてのときに、相手も初めてで、うまくいったかどうかよくわからなかったこと、という、昨日からもやもやしていたことを、先生に、話してしまった。
「…そう」
先生は、僕に反論も口出しもせず、ずっと優しく微笑んだままだった。
「本当のことを言ってくれてありがとう」
…すごく恥ずかしかったのは言うまでもない。
でも、菜々子先生に相談することで、何かアドバイスとか、これからに役立つ?ことがきっとあると思って、正直に話したのだ。
「まだ若いんだから、わからないことも失敗も間違いなくある。それを経験して、人は成長していくの」
「…はい」
「いつ誰と、どこでどんな風に…それは自由。でも、これだけは守って…女の子はデリケートな生き物なの。優しく扱ってあげて」