君の人生、変えてあげる。 19
そして、2時間目の数学、3時間目の理科総合では、莉緒ちゃんの隣に移動してサポートしてもらった。
4時間目を経て、流れで昨日と同じように食事をしたあと、みさちゃんに生徒会本部室に案内してもらった。
「たっくんが本部室に行く、と言ったら、普段は昼休みにはいない役員も全員集まってくれたんだよ」
「それは、なんか申し訳ないな」
みさちゃんが扉を開いた。
「酒本拓真君、ようこそ涼星高校へ!私が生徒会長の、相木純(じゅん)」
「あ、どうも…よろしくお願いします」
「操と同じクラスなんだね。仲良くしてあげてよ」
「もう仲良いから大丈夫だよ」
純さんとみさちゃん、仲の良さそうな姉妹だ。
一人っ子の僕にはわからないが、これが理想なんだろう。
「今の生徒会は私も含めて全員二年生なの」
純さんが隣にいる役員メンバーを紹介してくれた。
「副会長 湯沢 春香(ゆざわ はるか)…操と同じクラスの湯沢秋ちゃんのお姉さん」
春香さんは、目を合わせず、ちょっとお辞儀するような動作をした。
「書記 根本 郁(ねもと いく)」
「よろしくぅ〜」
「会計 宮内 麻耶(みやうち まや)」
「よろしくな!」
「同じく会計 菅 景(すが ひかり)」
「はじめまして」
最後のひかりさんは、ごく小さい声でそう言った。
「まあ、立ったままもなんだから、座って」
ひかりさんが僕とみさちゃんの分も椅子を置いた。
そして、大きなテーブルに、純さんが窓を背にして一番奥に一人座り、机の側面に、左側には奥から春香さん、麻由さん、右側には奥から郁さん、ひかりさんと並んだ。僕とみさちゃんは純さんと対面する位置に座った。
「この高等科は閉塞状態にあります」
純さんはちょっと硬めに続けた。
「この少子化の時代でも、初等科、中等科はまだなんとか『義務教育の公立でない教育を』という需要はあります。しかし高等科は、経済的理由や、進学を考え、中等科を終えて他の高校へ流出する生徒がここ数年急増しています。高等科からの入学生も減少傾向にあり、高等科の生徒数は減少の一途をたどっています…その状況を、変えるのが、君!」
純さん、ここで手をさっと前に出して僕を指した。
「理事長の『将来的に共学にして高等科活性化』のテストケースとして入学した君には、男子も…」
純さんはここで春香さんをちらっと見た。
「…もちろん女子も、住みよい高等科を作ることに参画してほしいの。まだ、共学としての制度とかの設計がまるでできていないでしょ。そのうち、こちらから話に行こう、と思っていたけど、今日来てくれて有難い」
「姉さん、それは、たっくん…いや、酒本君に生徒会本部役員になってほしい、ということ?」
「その通り…規約上、1年生でもできるし、副会長はあと1人、書記も会計も空席はある。だから会長以外は立候補できる。立候補を届け出るなら、補欠選挙を行って、信任投票で過半数を取れば、晴れて役員!…酒本君、まだ、自分のことが受け入れられていないのではないか、というのが困りごとなんでしょう…その一つの解決策として、立候補して、高等科全体に、君の名前と考えを、売り込めばいい」
いきなり、生徒会役員の話か…う〜ん…
ネット上で、女子が多い高校で突然生徒会の役員にならされてしまった男子が主人公の小説を読んだことがある。
彼の人生も楽しそうだ。しかし、僕には、もっと別の運命が用意されているようにも、なんとなく思えた。
それに、きのう飛鳥ちゃんからせっかく受け取った部活動紹介のパンフを、あのあとの怒涛の展開で、まだ開いてすらいないのだ。
やはり生徒会役員とかなったら部活動どころではないに違いない。