君の人生、変えてあげる。 187
「……ちょっと、親のつながりっぽい人だった……でも、別に親がこの人と結婚させようとかは、全然なく。だから、っていうか、親が認めるような子供みたいな交際しかできなかった。お互い、息苦しくて、いつのまにかうまくいかなくなっちゃった」
「そうなんだ…」
麗音さんは暗い顔を振り払うように、笑顔を作った。
「でも、もう、16歳にもなったし、いつまでも親が、親が、って、親の枠の中ばかりじゃないよなあ、とか」
「へぇ、麗音、大人だなぁ」
海里ちゃんが言う。
「いや…私も、あの時のことで身をもって知った、感じたこと。相手は年上だったから、なおさら私なんてお子様みたいで…」
麗音さんはうつむき気味に、そう話す。
「えっと、酒本くん…」
麗音さんが僕の名前を呼ぼうとすると、海里ちゃんが麗音さんの肩をちょんとつつく。
「私達のクラスでは、たっくん、って呼んでる」
「そんなんだ…あ、ええと、たっくん」
「はい」
改まって呼ばれた感じがして僕も緊張する。
「麗音も、たっくんって呼んでいいよね」
海里ちゃんが付け加える。
「うん、もちろん…麗音さんは、何て呼んだらいい?」
「えっと…なんでもいいよ。親しくなれたらそれが一番嬉しいな」
「じゃあ、麗音ちゃん…でいいかな?」
「うんっ」
僕に向かって笑顔を見せてくれた。
麗音ちゃん、この顔の方が可愛いな…
「よろしくね、たっくん」
「うん」
「さ、もっと近づいて、仲良くなったら」
海里ちゃんに促されて、麗音ちゃんは僕のとなりに入る。
そして、顔を何気なく僕の下の方に向けた。
「きゃ!」
麗音ちゃんは、ちょっと叫ぶような声を上げて、両腕で自らの胸を抑えた。
「どうしたの?」
海里ちゃんが不思議そうに聞く。
「男の人の…ちゃんとみるの、初めてで…そう思うと、今、男の人に裸見られてるんだ、って、あらためて思って…しかも、みんな見てるところで、っていう感じ…」
うん、それが、やっぱり普通の反応かな。