君の人生、変えてあげる。 181
「えっ、グラビアアイドル?」
「そう。浅岡峰 って知らない?」
知っている。たまに、雑誌の表紙に載っている。
僕は、その雑誌の表紙と、海里ちゃんを、頭の中で重ねた。
確かに、言われてみれば、似ている。
「本名は、峰代というのだけどね」
海里ちゃんはそのままの姿で説明する。
「この学校にいるの?」
「今はいないよ。でも、お姉ちゃんもここのOGなんだ」
…歳が離れているのか、詳しいプロフィールは知らないから変なことを聞いてしまったかな。
「お姉さん、大学に行きながら芸能活動してるんだよね」
「そうだよ」
茉莉菜ちゃんが聞くと、海里ちゃんが頷いた。
「それは、大変でしょう」
「姉も、いつまでもグラビアで仕事があるわけではないことは理解しているよ。だから、何としても、大学を四年で出て、次へつなげるんだ、って言ってる」
うーん、さっきの夕食のときの話といい、皆さん、ちゃんと将来考えている。
僕は、先生に向いているのではないかと言われたさっきの話をした。
「うん、私も、たっくん向いていると思う…実は、私も目指してる。教師として涼星に戻ること」
胡桃ちゃんは、ちょっと遠くを見るような視線で、そのように言った。
「もしたっくんが本当に先生を目指すのだったら、一緒に頑張ろうね」
胡桃ちゃんは両手を握りしめて言った。
「うん…」
その姿は頼もしく見えて、僕以上に胡桃ちゃんは先生に向いていると思わせた。
「ふふっ、胡桃って、たっくんのこと好き、でしょ」
海里ちゃんは笑って言った。
胡桃ちゃんは、目を伏せて、答えた。
「それは…みんな、多かれ少なかれ…そう…じやない?」
今度は、海里ちゃんが問われる番だった。
「うん…それは…そうだね」
「9時になったよ。お風呂行こう」
茉莉菜ちゃんが、時計を見てそう言った。
その声とともに、皆、もう一度服を着始めた。
僕も、Tシャツと、下はジャージを着た。
部屋のみんなで浴室の前まで来た。
「1〜3組浴室」「21時までは女子専用」という紙が貼ってあった。
「たっくん、久しぶり」
「あ、室田さん」
3組の委員長の室田みどりさん。
「みどり、でいいよ」