君の人生、変えてあげる。 177
「うん、お休みの日はね。たっくんも遊びに来てほしいな」
「うん…できればそうしたいな」
楓ちゃんの家、お店のケーキを食べたのはあの誕生日を祝ってもらった時だけだし、他にどんなものがあるのかも興味はあった。
「私、将来、パティシエになりたいと思ってるんだ」
楓ちゃんは言う。
「そうなんだ」
「そのために、高校を卒業したら、専門学校に行く」
将来の夢の話が出たところで、他の人も、例えば理恵ちゃんは、旅行を企画するような仕事をしたいとか、麻由ちゃんは、ニュースを伝えるような仕事をしたいのでそのために大学では、とか、具体的に考えている話が続いた。
「たっくんは、将来何になりたいとかある?」
麻由ちゃんが聞く。しかし、飛鳥ちゃんの叔父さんに聞かれたときも答えられなかったように、今も答えられない。
答えられないでいると、
「先生とか向いているんじゃない?」
「えっ?」
それは、今まで考えてもいなかったことだった。
「たっくんは、クラスの雰囲気を一度に変える力がある。涼星は、OGが先生になって戻ってくることが多い。たっくんも、先生になって、涼星に戻ってきて、クラスの雰囲気を良くできるんじゃないかなあ」
うちの先生に、OGが多いというのは、初めて聞いた話だ。
「それって本当?」
「うん、たとえば、私たちの担任の唯先生とか、体育の菜々子先生とか、えーと、シングルマザーの…三上佐智子先生か…そのあたりは、みんな涼星の出身」
麻由ちゃんがそう教えてくれる。
「マユ、いいこと言うねぇ。私もたっくんには向いてると思うよ」
そう言うのはみかちゃん。後ろで理恵ちゃんも少しオドオドしながら頷いている。
僕は、教壇に立った自分を想像してみた。
共学化しても、きっと女子の方が多いクラスだろう。
そこで、教えていく姿は、悪くないような感じがした。
「うん、教師になること、いいかもしれない」
夕食が終わって、B班のみんなと別れて、胡桃ちゃんとかのいる部屋に入った。
「あ、たっくん、いらっしゃい」
他のみんなは、UNOをやっていた。
「お風呂行くまで、UNOしてるんだ。たっくんも入る?」
「うん」
胡桃ちゃんに促されて、僕は輪に入る。
「ねぇ、ここから、罰ゲームで、負けた人は一枚ずつ脱ぐ、っていうのはどう?」
「私達には、あまり『罰』ではないかも」