君の人生、変えてあげる。 169
僕は天音ちゃんともう少し話そうとした。
それもあるし「シルバーアクセサリー」自体のことも知りたかった。
「シルバーアクセサリー、って、銀で作る、ってこと?」
「うん、そう」
僕は中学校の技術家庭の金属加工を思い出した。結構切るとか削るとか大変だった覚えがある。
「金属の銀を切ったり削ったりするの?」
「ううん、違うみたいで、粘土みたいなものから作って、焼いてもらうと、シルバーアクセサリーになるんだって」
天音ちゃんは自らのスマホを操作して、そのあたりの説明を見せてくれた。
「あたしこれやったことあるんだ」
天音ちゃんよりもう少し背が高く、もう少し活発そうな人が横から現れた。
「簡単だったよ」
「みかちゃん、当日は教えてね」
麻由ちゃんが言う。
みかちゃん、と呼ばれた人は僕の方を向いた。
「あ、酒本君には、はじめまして、になっちゃうかな。紺井 みか、っていいます。よろしく」
みかちゃんは、僕に右手を差し出した。僕も右手を出して、握手した。
「え、えー、1日目の、確認をします。バスで着いて、ホテルに荷物を置いたら、ここに、移動します」
班長のりえちゃんが宣言して、6人と、僕が改めて集まった。
まだ話したことが無いもう一人の女子は、あとで名簿を確認すると「森 海咲」さん、ということだった。
1日目の話が終わったので、僕はひとまずここの班を離れる。
次は飛鳥ちゃんのところの班に行くことでいいのかな。
僕は、あたりを見回した。
「たっくん、こっちこっち!」
視線を向けた先で、手を振るのは同じ班の香里ちゃんだ。
…それにしても、香里ちゃんはいつ見ても印象が違う。
初めて会ったときは眼鏡に三つ編み、それがコンタクトになって、今は髪も後ろをバッサリと切って短くなった。
「よろしく。香里ちゃん、髪型変わったね」
「気づいてくれたんだ、ありがと」
「昨日、美容院に行ってきたんだよ」
香里ちゃんはそう続けた。
「似合うよ…いや、どんな髪型でも」
香里ちゃんはちょっとくすっと笑った。
飛鳥ちゃんのA班のメンバーを見渡すと、話したことはあるメンバー。
あとの4人は、
数学や理科でお世話になっている莉緒ちゃん、
生徒会本部役員の妹で、これから立候補する、操ちゃん秋ちゃん、
そして、選管の、綾ちゃん。
ええと、飛鳥ちゃんの班では、二日目午前に、美術館とか博物館に行って一緒に昼食を食べる、っていうコースだったかな。
「あ、たっくんが来たから、二日目午前の確認ね」
飛鳥ちゃんがこちらに気付いて、言った。
「うん、よろしく」
飛鳥ちゃんを中心にして、机に地図を広げる。
美術館と博物館はすぐ近くにあり、午前中でちょうど回れる、という案配のようだ。
「ちょうどこの辺は、有名な画家や彫刻家の人の出身地なんだって」
飛鳥ちゃんは言う。
「まあ、私もよく知らないんだけど。それでも、こういう場所を回るのは好きだから」
「博物館は?」
「高原の近くに地層があってね、恐竜の化石も出たことで有名だよ」
今度は莉緒ちゃんが言う。