君の人生、変えてあげる。 168
今日は特に授業をするわけではなく、その宿泊研修の説明や班ごとの計画の確認作業に充てられる。
それも半日で終わり、後は家に帰って準備をする。
…なので、多少大雑把でも良かったけど、やっぱり明日のためにビシッとしないと…と思い、少し焦り気味で身支度を整えて学校に向かうのだった。
「おはよう、たっくん!」
「おはよう」
教室に入ると、週末一緒に過ごした茉莉菜ちゃんと歩ちゃんに声をかけられる。
「おはよう」「おはよう」
僕は2人それぞれにあいさつした。
やはり、そういう仲になった後に再び日常に戻った、という状況は何度あってもなかなか慣れるものではなく、ちゃんと目を合わせられなかった。
それでも、2人ともそんなことは気にせず、というよりも、それだからこそ、以前よりもっと僕に近づき、気軽に体に触れてきたりした。
僕は、教室を見渡した。
考えてみると、もうクラスの三分の一近くの人とそういう関係になったんだ…
「たっくん、私、胡桃と同じD班だから。明日の晩もよろしくね」
「あさっての夜も、また一緒だね」
茉莉奈ちゃんと歩ちゃんがそれぞれそう言って、お互いに顔を見合わせてちょっと笑った。
そのうち、予鈴が鳴り、そしてショートホームルームが終わった。
さて、班ごとの計画の確認、で、僕がまず行くのは、理恵ちゃんのB班のところ。
何かを制作する体験コース、だったな。
僕は、班の名簿を見直した。
実は、B班は、理恵ちゃんと、ケーキ店の楓ちゃん、新聞委員の麻由ちゃん、以外の3人とはまだあまり話したことがない。
…今回の宿泊研修をきっかけに仲良くなれるかな、そう思いながら名簿を眺めていた。
「たっくん、まずはうちの班からだね」
「よろしくねー」
「うん、よろしく」
麻由ちゃんと楓ちゃんがこちらにやってきた。
「たっくんも行くシルバーアクセサリー作りは、天音ちゃんが提案したんだよ…天音ちゃん!」
麻由ちゃんがそう言って振り返った。その視線の向こうで、どちらかというと小柄な、どちらかというと地味目な子が、立ち上がってこっちに来た。
「三本杉 天音ちゃん、たっくん、もしかしたらあんまり話したことなかったかな?」
「うん」
そして僕は、その子の方を向いて、
「天音ちゃん、って呼んでいいのかな?よろしく」
「あ…よろしく…」
天音ちゃんは恥ずかしそうに、俯いて言った。
「えっと…」
「天音ちゃんも、たっくんって呼んでみなよ」
麻由ちゃんが背中を押す。
「えと、たっくんが、気に入ってくれたら、私も嬉しい、な…」
天音ちゃんは顔を赤らめながらそう言う。