君の人生、変えてあげる。 150
クラスメートのあと三人には、何かの形でこの話は伝わっていたようで特に議論することもなく、そこに行くことになった。
磯村先輩と高森先輩は、顔を見合わせて、ちょっと苦笑いした後、2人だけで何か小声で相談していた。
そして、磯村先輩はこう言った。
「一年生諸君の内輪的なところに、行ってもいいのかな?」
「ええ、先輩たちも是非」
僕とて、最初から先輩2人を外して考えることなどしていなかったのだから…
「ふふ、面白そうだからいいじゃない」
高森先輩は相変わらずの笑顔で言う。
こうして、僕たちは『休憩』のため、そのマンションへと向かったのである。
「歩ちゃん、」
「ん?」
「その部屋のことって、飛鳥ちゃん、なんて言ってた?」
駅に向かいながら、僕は歩ちゃんに聞いた。
歩ちゃんはちょっと首をひねった。
「ええと、叔父さんが持ってる、普段使ってない部屋、って言ってた」
そこまでは僕も聞いていることとだいたい同じだ。
「アスの叔父さん、その別宅の稼働率を上げたいって言ってる、って、アスは言っている」
「カドウリツ?」
「たぶん、稼ぐ、に動く、に率。工場とかの用語みたいだね」
確かに、飛鳥ちゃんの叔父さん、工場内のシステムを作ってる、って聞いたような気がする。
「日曜にたっくんを誘って文芸部でここに来るんだ、ってアスに言ったら『もしよかったら、ここ使って』って言って、あとで鍵を貸してくれたんだ」
歩ちゃんはその鍵を示した。
叔父さんに協力するのも目的の一つだろう。
しかし、飛鳥ちゃんの本当の目論見は…
「しかし、休憩のために空き部屋を貸してくれるってのも、なかなかのお友達だね」
高森先輩が言う。
「私も、どうすればいいとは聞いてないんですけどね」
歩ちゃんはそう言った。
地下鉄に乗って、駅を降り、そこに着く前にあったコンビニで、僕たちは飲み物とかを買った。
「これ、買っておいたから。一応2箱」
伊織ちゃんは、あの小箱を歩ちゃんに示しながら、小声で言った。
「これはさすがに部の活動費にはならないかな」
横から高森先輩が、やはり小声で笑った。