君の人生、変えてあげる。 148
「は、はい…」
産休制度、確かに聞いたことはあったけど、それを対象になった生徒がいたことに驚いた。
前にあったのは、確か三上佐智子先生だったから…
「その方は、どんな人なんでしょう」
「彼女は、それでお休みすることがなかったら生徒会役員になっていたはずの人だからね」
竹中先輩は、少し遠くを見るような表情になった。
「生徒会役員の改選を控えた5月に、あの子の妊娠が分かった…この学園だって、私たちはまだ高校生。妊娠って決して祝福されるばかりじゃない」
「そうでしょうね」
「おろして、予定通り生徒会役員になって…っていうコースもあったと思うけど、やっぱりあの子の仁徳なんだろうな。多くの友達は、できれば、おろしたくはなかった、彼女を支えた」
僕は、突然自分の中に子供ができたら、どんなふうに思うんだろう、と、想像しようとした。
「そんな彼女だから、友達は多いし、支持する人も多い。君が彼女を説得することができれば、当選に大きく近づくことになるよ」
「はい…」
「おそらく強硬派の人たちも興味を持っているから、なるべく早く会ってみたい…かな」
「はい…何て言ったらいいか、何をしたらいいか、考えてみます」
「では、それは君が宿泊研修から帰ってきてからそうそうに詰めよう。週明けだよね、宿泊研修」
「はい」
「あと、ちょっと戻るけど『うらやましい』と思うグループの中から、この人たちに会ってみるといいのでは、と、どうやって会うといいか、のデータを渡すよ。今スマホとかある?」
「はい、もちろん」
竹中先輩は、PCにもスマホにも挿さる媒体を取り出した。
「ちょっと貸してね」
「はい」
竹中先輩は僕のスマホにその媒体を挿し込むと、パソコンを操作し始める。
「今から君のスマホにデータを送るから」
…その作業はほんの数分で終わり、先輩から送られたファイルを確認してみる。